著者
東海林 まゆみ
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

水の波の分岐問題に関し、従来の研究でやり残したいくつかの間題を再度取り上げてみた。その結果本研究では、渦あり流れの数値シミュレーションにおいて下記のような成果を得た。渦度分布を種々に変化させて分岐解を数値計算し、以前の研究結果と合わせて極限波形状を調査・分類することが目的である。自由境界領域における渦あり問題を数値計算するのにはZeidlerの方法を用いた。しかし数値実験を進める過程で、この方法では計算できない(closed eddyが生じる)場合があることがわかった。現在までに渦度一定の場合にclosed eddyが存在することはわかっているが、一般の渦度分布でも発生し得るのか、またその場合にはどのような解決策があるか、は今後の課題である。ここでは計算可能な場合について差分法で数値シミュレーションを行い、いくつかの結果を得た。深さは有限の場合のみを扱った。無限深さの場合にはプログラミング上の問題が解決できていない。これも今後の課題である。本研究で得た計算結果は、下記の通りである。以下、渦度関数は常に正または負で、定数あるいは水深とともに減衰するような関数を考えた。たとえ僅かでも表面張力が働く場合には、渦度分布をどのように与えても極限波はすべてoverhanging typeあるいはoverlapped typeになった。一方重力波で渦度が水深とともに減衰する場合には、cornerあるいはcuspを持つ極限波となる。また重力波で渦度一定の場合には、極限波に至る途中でoverhanging typeの波形が現れ、その後cornerを持つ極限波に至る。これまでの数値実験によると、重力波においてこのようなoverhanging typeの波形が現れるのはこの渦度一定の場合のみであった。これは注目すべき現象であり、今後更に検討していきたいと考えている。以上の研究成果は、2004年11月台北の科学院数学研究所で開催された研究集会において発表した。更に2,3のデータを揃えた上で論文としてまとめる予定である。