著者
藤本 宜正 伊藤 喜一郎 岸川 英史 東田 章 高羽 夏樹 小林 義幸 中森 繁 佐川 史郎 園田 孝夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.795-800, 1997-09-20
被引用文献数
8 3

(背景)心筋血流イメージング剤として開発された^<99m>Tc-methoxy-isobutyl-isonitrile(^<99m>Tc-MIBI)は腫大上皮小体にも集積することが知られている.われわれは,上皮小体機能力進症の術前局在診断における^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィの有用性について検討した.(対象と方法)1994年6月から1996年9月の問に当科で上皮小体摘除術を施行した,原発性上皮小体機能充進症(PHPT)11例と二次性上皮小体機能力進症(SHPT)13例(1例は亜全摘除術後の再発例)を対象とした.^<99m>Tc-MIB1600MBqを静注し,150分後のde1ayedimageでの集積像を陽性と判定して,手術所見と比較検討した.(結果)PHPT11例のうち10例は単発性腺腫,1例は原発性過形成で,腺腫10腺中9腺と過形成3腺中2腺が^<99m>Tc-MIBIで描出された(感度84.6%).術中に確認した正常腺への集積や偽陽性像はみられなかった(predictivevaluepositive 100%).描出されなかった2腺の重量はともに200mg,描出された11腺は300〜4300mg,平均1246mgであった.一方,SHPT!3例では手術時に49腺を確認し,過形成43腺を摘除あるいは部分切除した.43腺中28腺(重量290〜2639mg,平均999m1茎)が描出され(感度65.1%),これら28腺と描出されなかった15膜(90〜540mg,平均283mg)の平均重量に有意差を認めた.術中に正常大と判断した6線への集積はみられなかったが,1例に甲状腺結節に集積した偽陽性像がみられた(predictivevaluepositive96,6%)(結論)^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィは腫大上皮小体の描出に優れ,上皮小体機能亢進症,特にPHPTの術前局在診断に有用である。しかし,重量300mg以下の小さな腫大腺の描出には限界があると考えられる
著者
島田 憲次 細川 尚三 東田 章
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2097-2102, 1993-12-20
被引用文献数
5 5

出生前診断される腎尿路異常症例が増加するに従い,その治療法として胎児治療を真剣に考えねばならない症例にも遭遇している.今回はヒト胎児水腎症を組織学的に検討し,先に報告した正常胎児の腎発育と比較しながら,胎児治療に対する病理学的背景を考察した.対象は過去約10年間に剖検が加えられた胎児水腎症21例32腎で,基礎疾患,は尿道閉鎖/狭窄7例,腸裂3例,水子宮膣症2例などであった.腎皮質の嚢胞形成は12例に見られ,主として糸球体嚢胞と考えられた.大小の嚢胞が多数見られた7例は,いずれも両側の高度の水腎症であった.ネフロン形成層は軽〜中等度の水腎症ではGW33週頃まで見られたが,嚢胞形成が著しい腎ではすでにGW28週でも消失していた.尿細管・集合管の所見としては,管腔の拡大あるいは逆に間質の増生が著しいための管腔萎縮像が見られた.拡張した管腔や腎皮質の嚢胞は腎実質に均等に見られるのではなく,腎の区域により差が見られた.腎異形成は6例10腎に見られ,いずれもGW30週以降の症例であった.高度の水腎症ではGW30週近くになると糸球体数の減少が明らかであった.以上の結果から,胎児の腎機能が回復するか否かはネフロン形成層が残されているか,あるいは腎異形成が完成しているか,の2点にかかっており,尿路を減圧する胎児治療はGW20週を越えた頃,あるいはそれ以前に適応される必要がある.