著者
杵渕 洋美
出版者
学校法人 敬心学園 職業教育研究開発センター
雑誌
敬心・研究ジャーナル (ISSN:24326240)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.27-38, 2020 (Released:2021-01-29)
参考文献数
39

本稿は、ドイツの職業教育におけるコンピテンスおよびEU諸国との制度共通化に向けた国内制度の整備と職業教育の高度化の動向を捉えたものである。EU全体の動きとして、資格・学位を共通の視点で理解するための仕組みである欧州資格枠組み(EQF)が策定され、ドイツは資格枠組みDQRを運用しているが、高等教育に重点が置かれる高度化の動きは労働市場との不適合を起こしている。またDQRはコンピテンスを軸に構成されており、そのレベルが能力指標となっているが、EU共通の学位制度の導入により、単位を取得することで学位が得られ、それがDQRのレベルを表し、相応の能力認定が容易になった。この動きは、「能力」が「資格」と同じように「所有」するものとして扱われること、すなわち能力の等価交換性を生むものである。さらにその「能力」は個人の責任において獲得すべきという技能形成の「自己責任」「個人主導」への方向転換である。