著者
松井 寿美子
出版者
聖カタリナ大学短期大学部
雑誌
聖カタリナ女子短期大学研究紀要 (ISSN:02869748)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.37-54, 2000-03-10

幼児の共同制作は個人の作品や絵を集合させて一つの作品にする持ち寄り型と, みんなで意見を出し合って協力して描いたり作ったりする計画型の二つのタイプに分けることができる。特に後者はイメージの共有・役割の理解・行動の調整制御・個々の技術や技法の習熟などが前提となる。それぞれが持ち寄る形態を利用しながら計画型の共同制作をする機会を待つのが通常の方法である。共同制作はごっこ遊びや劇遊び, 作品展などでよく見られる活動である。しかし, 絵画作品の指導はあまり試みられていない。本論では, 個性と協調性が無理なく共存する共同の絵画制作の成立に必要な配慮について5つの実践を通して考察した。 1.題材設定においては次の3つの要因を含むことが望ましい。(1)一人ではできない画面の大きさ。(2)その大きさが必要条件となる内容。(3)多くのアイデアや発想が必要となる内容。 2.共同の絵画制作ではグループ構成が大きく活動に影響する。個人の技能や能力, 集団活動への参加態度, 秩序を錯乱させる可能性のある子どもの配置, リーダー的な役割に対する適性などを考え併せてグループ編成を行う必要がある。 3.子どもをゆさぶり, 刺激するような大掛かりな環境構成をしても, 保育者が子どもを十分に把握していなければ意味をなさない。環境構成には保育者のさりげない心配りが必要である。