著者
松井 真一
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.37-55, 2017-02-28 (Released:2021-12-18)
参考文献数
19

本稿の目的は、実親から成人子へ提供される育児支援(情緒的支援、実践的支援)が、きょうだい間でどのように分配されているのかについて明らかにすることである。二項ロジットマルチレベルモデルを用いた分析では、資源分配メカニズムの解明のために、きょうだいそれぞれの性別やきょうだい人数、出生順位といったきょうだいに関する情報を表した「きょうだい構造」の効果を検証した。分析の結果、情緒的支援、実践的支援の両方で、親からの育児支援は息子よりも娘に対して行われやすいことが明らかになった。きょうだい人数や出生順位と親からの育児支援には関連がみられなかった。この結果は、育児資源の分配がそれぞれの子どもに応じて投資されるという「選択的投資モデル」を支持するものである。親から子どもへの支援が一様に行われるわけではないことを踏まえれば、今後は親からの支援を得られにくい者に対して如何に代替となる支援体制を構築していくかが課題となる。