著者
安藤 丈将
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.145-173, 2020-02-21 (Released:2021-09-24)
参考文献数
36

本稿では、社会運動と民主主義との関係を論じている。主に民主主義の研究者の議論に焦点を絞り、彼らが社会運動の役割をどう見ていたのかを明らかにしていく。 一節では、民主化研究の古典を検討しながら、その中で社会運動という行為者の民主化に果たす役割が重視されていなかったことを論じる。二節では、政治学と社会学の分業化の中で、民主主義研究と社会運動研究の分離が生じたことに触れた後、一九九〇年代以降、モダニティの構造変容とそれに伴う政治の再定義の状況の中、二つの研究領域の再統合が進んでいることを見ていく。 三、四節では、一九九〇年代以降の民主主義論者の中でもっとも意識的に社会運動を位置づけてきた一人であるアイリス・マリオン・ヤングのテキストを取り上げる。彼女は、社会運動が公式の政治制度の外側に政治参加の場を提供すると同時に、その場において政治的コミュニケーションの手段を多様化して熟議的な民主主義の実現に寄与するという形で、社会運動の役割を位置づけていた。 五節では、社会運動内部の民主主義と熟議システム論という、このテーマに関する最新の研究動向を概観しながら、社会運動と民主主義というテーマの今後を展望する。
著者
伊藤 勇
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.74, pp.83-104, 2003

シンボリック相互行為論(SI)の自己刷新の試みとして、ノーマン・デンジンを取り上げる。デンジンによれば、現代社会学において、SIほど解釈的志向を鮮明に打ち出し、質的方法を活用して人びとの意味世界や生きられた経験のフィールド研究に専心してきた学派は他にない。しかし、こうした誇るべき特長をもつSIも、後期資本主義の深化する現在の歴史局面(ポストモダン)において、人びとの経験と行動の問題に取り組もうとするならば、科学、言語、文化・コミュニケーション、知と権力に関する基本観点で克服すべき重大な弱点を抱えている。その点でSIは、ポスト構造主義やカルチュラル・スタディーズに多くを学ばなくてはならない。その上で、デンジンは、SIの特長を組み込み、ポストモダンの時代と思想に呼応した新たな研究プログラムとして、「相互行為論的カルチュラル・スタディーズ」を提起した。それは、デンジン自身を含む従来のSIからの大きな転回を意味する。ここでは、『シンボリック相互行為論とカルチュラル・スタディーズ』(1992)を主要テクストとして、そのSI批判と新研究方針のポイントを確認し、彼の転回の意義を考える。
著者
佐藤 康行
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p121-144, 1987

従来の親分子分関係の研究は、主として山梨県をフィールドにしておこなわれてきたため'その多様性が十分に明らかにされてきたとはいえない。本稿では、新潟県妙高高原町杉野沢地区の親分子分関係を考察した。杉野沢の親分子分関係は、主として農作業の共同集団であるマキの内部で結ばれてきている。マキは、本分家のほかに、婿や養子をやったりもらったりしている本家格の家とその分家を含んでいる。親分子分関係は、マキの内部で、主に本家格の家どうしが互いに親分子分をしあう形態と本家格の家が分家格の家を子分にする形態の二つがある。しかも、それらはいずれも世襲的、主従的ではなく、親和的融和的である。その点で、杉野沢の親分子分関係は、「大垣外型」と「上湯島型」の校合ないし中間と考えられる。槻分子分関係のこのような性質は、家の行邪を司る「亭主役」の性質と同じである。杉野沢においては、かつては「亭主役」は婿や養子をやったりもらったりしてきた家で、なおかつ妻の実家であったり、姉妹が嫁いでいる家どうしの問で相互におこなっていた。また、本家が分家の「亭主役」をおこなっていたばかりでなく、妻の実家や婿にいった家が「亭主役」をおこなっていた。「亭主役」が有するこのような家の関係は、家の系譜関係に基づく権威並びに主従関係を壊す側面をもっている。親分子分関係が必ずしも本分家関係と重複せず、親類関係の問で結ばれていることのなかに、「亭主役」が有する家の性格が窺えるのである。