著者
菅原 広史 松元 三展 遠峰 菊郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.637-649, 2008-08-31

関東の南岸域に発生した局地前線について航空機観測を行い,上空でのエアロゾル分布と局地前線に伴う視程の悪化について議論した.2003年12月19日の午前に観測された局地前線は,夜間に関東内陸の地面付近に蓄積した寒気と,南よりの暖気移流との間で発生した.前線面付近でのエアロゾルは粒径ごとに異なる温位層内に分布しており,前線面の上部で高濃度になっていた.その後正午ごろには地面付近の寒気は解消したが,局地前線は西風と北西風とのシアへと変質した.この時,前線面の寒気側下層で粒径3.0μm以下のエアロゾル濃度が高くなっていた.この領域では午前に20km以上であった視程が5km程度にまで下がっており,この視程の低下はエアロゾルの増加によるものであった.