著者
松尾 愛
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.37, 2006-03

【目的】本研究では、P300を指標として(1)運動と運動イメージの想起における脳内の情報処理過程の基礎的な知見を得ること(2)課題となる運動の内部モデルが獲得されているか否かにおける、運動と運動イメージの想起における脳内の情報処理過程を検討することにより、運動イメージの作用機序を明らかにすることを目的とした。<実験1.実運動と運動イメージのP300の検討>【研究方法】被験者は、健康な男子10名(22.4±1.07歳)。刺激呈示には聴覚オドボール課題を用い、標準刺激(1000Hz)と標的刺激(2000Hz)を8:2の呈示確率でランダムに呈示した。手続きは、ボタン押しの運動条件とMI条件である。記録部位はFz、Cz、Pzで、30回の加算平均処理を行なった。<実験2.運動群と非運動群におけるP300の検討>【研究方法】被験者は、健康な男子20名(21.9±2.84歳)。内訳は、右足拇指の外転運動が行なえる者10名、右足拇指の外転運動が行なえない者10名。刺激呈示は実験1と同様である。手続きは、課題1:運動群(ボタン押し)20名、課題2:運動群(右足拇指の外転)10名、課題3:非運動群(右足拇指の外転)10名。条件は、コントロール条件運動群運動イメージ群の3条件を設定した。記録部位はFz、Cz、Pzで、60回の加算平均処理を行なった。【結果及び考察】運動条件と運動イメージ条件の比較では、P300潜時には条件間の差はなかったが、P300振幅は運動イメージ条件よりも運動条件で振幅が高くなった。この結果から、実運動と運動イメージの想起では、刺激を評価する時間に差異はないが、反応過程以前の、刺激の認知過程からすでに情報処理を行なう脳の活動量に違いがみられることが示唆された。課題2と課題3の比較では、P300潜時及びPOO振幅の差はみられなかった。よって、課題となる運動の内部モデルが獲得されているか否かによる脳内の情報処理過程における違いは、刺激の認知過程では差が見られず、反応過程が影響する可能性が示唆された。