著者
松本 俊太 松尾 晃孝
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.84-103, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
37

本稿はこれまで研究が手薄であった,国会議員個人の委員会での発言を分析する。 委員会の研究は,議事手続の一部としての観点や,与野党の対決の場としての観点からのものが中心であったが,本稿は,議員個人にとっての委員会という観点を追加し,委員会で発言することは議員の再選・党内での出世・専門性の発揮にとって有用であることを論じる。このことを実証するために,まず,Perlスクリプトにより衆議院の各常任委員会の会議録を解析し,議員の発言量を委員会ごとに測定し,議員発言のデータ・セットを作成した。次に,その発言量の決定要因についてTobit modelによる計量分析を行う。分析の結果,議員個人,政党政治,議員の専門性の活用という3つの側面が発言の量を決定する要因として重要であることを示す。併せて,1994年の小選挙区比例代表並立制の導入に伴っ て,議員の発言量のパターンが変化していることも示す。