著者
松尾 淳一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.244-247, 2013-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

ある炭素-水素結合を炭素-重水素結合に置き換えた場合に,反応速度が遅くなることがある。その効果を速度論的同位体効果という。その置き換えた結合がその反応にて切断される場合は,一次同位体効果として知られている。また,重水素にて置き換えた結合が反応によって切断されない場合は二次同位体効果として知られ,その重水素の位置の違いから,α二次同位体効果およびβ二次同位体効果として分類されている。これらの速度論的同位体効果によって,反応のどの段階が一番おそい段階(律速段階)なのか知ることができ,さらに反応の遷移状態の構造に関しても情報を得ることができる。したがって,速度論的同位体効果を明らかにすることは,反応機構を調べる際の重要な方法の一つとなっている。