著者
姫野 誠一郎 松尾 直仁 鈴木 継美
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-39, 1989-01-31 (Released:2010-06-28)

マウスの飼育環境が,個体数増加や行動にどのような影響を及ぼすかを調べるため,実験室内でマウスを自由に繁殖させながら長期間飼育することのできる「populationcage」を製作した。「populationcage」は,openfield(1m×1.5m)とそれに接続した多数の小ケージとから成る。4週齢のICR系マウスの雌雄各4匹ずつを導入し,以後約20週間にわたって自由に繁殖させ,総個体数,性・年齢別個体数構成,出生・死亡数,及び種々の行動について観察を行なった。本研究においては,餌の供給量や居住空間を変化させ,個体群の大きさを制御する要因の解析や,密度増加に伴うマウスの行動変化等について検討した。餌を十分に摂取させた場合,総個体数の増加はほぼ直線的であった。その際,哺育仔総数の増加に伴い,他の哺育仔に押しのけられて授乳されずにいる新生仔の死亡率が著しく増加した。餌の供給量を制限した場合,マウスの総個体数は180匹に達して以降全く増加せず安定した。居住空間を様々な広さに変化させた場合,openfieldに出て来て授乳を行なったり,あたかも壁を越えようとするようにマウスが跳び上がったり等の特徴的な行動が観察されたが,それらの行動が初めて観察された日の個体数密度は,いずれの広さの場合においてもほぼ同じ値であった。