著者
松山 敏之 竹越 哲男 髙橋 秀行 近松 一朗
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.310-316, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
8

アレルギー性鼻炎の有病率は年々増加し,長期寛解,治癒が望めるアレルゲン免疫療法は,今後ますます重要な治療法になると考えられる。今回我々は,スギ舌下免疫療法(SLIT)により改善した症状とQOL(quality of life)及びSLITの満足度との関係について検討を行った。2014年11月から2017年12月までの間にスギ舌下免疫療法を開始し,2019年2月1日まで継続治療できた39症例を対象とした。2019年スギ花粉飛散後にSLIT開始前とSLIT後の症状スコア,QOLスコア,SLITの満足度の調査を行った。鼻水,くしゃみ,鼻閉,眼のかゆみの評価したすべての症状でSLIT後に症状スコアの改善がみられた。QOLスコアにおいて評価したすべての項目でSLIT後に改善がみられた。治療前の症状スコアとQOLスコアの間には多くの項目で有意な相関を認めた。治療前の症状スコアは高満足群,低満足群の2群間に有意差はなかったが,治療前後のスコアの改善幅はくしゃみ,鼻閉,眼のかゆみの3症状で2群間に有意差がみられた。症状の改善幅が大きいとSLITの満足度は高くなってくると思われた。症状スコアの改善幅が高満足群と低満足群の2群間で有意差があった3症状について,高満足度への寄与度を多変量解析にて検定すると,治療前後での鼻閉スコアの改善幅が大きいことが満足度に最も寄与した。SLITの満足度に最も影響を及ぼすのは,鼻閉症状の改善であると思われた。