- 著者
-
長坂 昌人
本田 勝紀
松崎 健三
- 出版者
- 一般社団法人 日本不整脈心電学会
- 雑誌
- 心電図 (ISSN:02851660)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.3, pp.353-359, 1983-05-31 (Released:2010-09-09)
- 参考文献数
- 34
東大第1内科に入院して低Na血症を示した患者48例の心電図を, 血清Na濃度が≦130mEq/lの時とそれ以上の時との間で比較した。その際血清Na濃度と血清K濃度とは相関がなかった。同一患者での比較であるので血清Na濃度の変動の幅は小さかったが, 低Na血症時にRR間隔は短縮し, 第II誘導でのP波の幅が延長した。その他の測定値には有意の差がなかった。P幅の延長は心筋細胞電位において媒液Na濃度を低下させると興奮伝導速度が低下することに対応する。RR短縮は歩調取り細胞の自発興奮は低Na媒液で, 緩徐化または不変とされているのでそれからは説明できない。むしろ交感神経末端でのカテコラミソの取込みの抑制, 放出の増大の影響を考えるべきと思われた。このことは房室伝導においても低Na媒液は延長させるという成績に対し, 臨床心電図では不変か若しくは促進していることと関係あるかも知れない。なお心室内伝導に関しては脚ブロック型等の延長傾向を示す例が見られた。そのうちの1例は低Na血症の解消と共に脚ブロック型も改善した。