著者
小川 数也 松崎 加奈恵
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-46, 1987-07

三宅島周辺浅海域に生息するムギワラエビの摂餌生態を実験室内にて観察した。本種には3タイプの摂餌方法がみられる。第1のタイプは鉗脚で歩脚のGroomingやCleaningを行った後,第3顎脚を使って鉗脚指節・掌節剛毛に捕捉された懸濁物質塊を掻き取り,これを摂蝕する方法である。この行動は休みなく,ほぼ規則的に行われる。現場で固定した標本の胃内容物は,デトライタスと砂粒であったことから,この摂餌方法が基本的なものと思われる。第2のタイプは粉末餌料等を投与した直後にみられるもので,第3顎脚を伸ばし,盛んにすき取り運動を行い懸濁餌料を直接捕捉する方法である。また,餌料を投与すると歩脚を順番にゆるやかに伸ばし,タイプIの摂餌も同時に始まる。第3のタイプは狭い容器内でみられた特殊な場合で,海綿類など他の試料と一緒に入れた際,これを鉗脚・第3顎脚で直接捕捉しむさぼり喰うものである。本種はツノサンゴ類やヤギ類に懸着共生するのに都合の良い極めて長い歩脚を有しているが,これを十脚甲殻類に広くみられるGroomngやCleaningの他に,摂餌の機能に利用している。なお,これまでの観察記録から,本種の寿命はほぼ一年,抱卵は年1回と推定される。