著者
野辺地 郁子 松川 るみ 永井 堅 永井 宏
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1434-1437, 2002-12-10

はじめに 近代の医療進歩は目覚しく,日々刻々と発展し続けている.周産期医療においても同様であり,周産期死亡率の低下は,医療技術の発展により,より安全に分娩を迎えることができていることを証明している.これに伴い最近,妊産婦自身の分娩に対するニードも高まり,分娩の安全性のみでなく,満足度や快適性を求める妊産婦が増えてきているのが現状である. 近年では,フリースタイル分娩という考え方が医療従事者のみならず,妊産婦のなかでも定着しつつある.しかしフリースタイルバースとの表現は日本のバースエデュケーターによる国産英語で,外国の文献などによると分娩体位の自由に関してはfree positionが一般的であるが,分娩時の行動を合わせてフリースタイルと表現しているものと思われる.すなわち,陣痛時から分娩時に至るまで産婦の好む体位で自由に動き出産を迎えることである.このため,産婦は自分の意思が尊重され,自分も分娩に参加したという意識を高めることができる.産婦が自分自身の分娩を知り,分娩中の不快や苦痛を上手く緩和することにより,身体的にも精神的にもリラックスへとつながる.リラックスは分娩の進行に対してとても大切な要素であるといえる.当院では座(坐)位分娩を中心とした分娩管理を行っている.そこで,いわゆるフリースタイル分娩をからめて当院の分娩管理について述べたい.