著者
八木 美佑紀 桑原 未来輝 松本 実優 宮澤 未来 落合 和
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第49回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-29S, 2022 (Released:2022-08-25)

妊娠期には体の不調とともに妊婦の10%程度がうつ病に罹患している。妊婦への向精神薬等の投与は胎児への安全性を考慮し慎重に行う必要がある。そのため、気軽に摂取できるサプリメントの需要が高まっており、その中でもCannabidiol(CBD)という成分が注目されている。CBDは、大麻に含まれる主要なカンナビノイドの一つであり、精神作用がなく、抗不安作用を示すことが報告されている。したがって、今後、妊婦が不安を解消するためにCBDを気軽に摂取することも想定される。しかしながら、妊娠中にCBDを使用する際の胎児への影響については知見が乏しいのが現状である。本研究では、妊娠中にCBDを使用した際の、胎児への安全性について、薬物動態学と神経発生学の観点から解析した。我々はまず、妊娠中期のマウスにCBDを投与した際の胎児とその脳への移行性をLC-MSを用いて解析した。その結果、CBDは速やかに母体から胎児へと移行することに加え、胎児の脳内にも移行がみられた。胎児期の大脳皮質では、神経幹細胞からニューロンへの分化が活発になり、大脳皮質の6層構造が形成されはじめる。したがって、母体から胎児脳へと移行したCBDがこの過程に影響を及ぼすことが危惧される。そこで次に、胎児の神経発生に対するCBDの影響を解析した。本研究の結果から、妊娠中のCBD 使用は、神経幹細胞の増殖を促進し、IV層のニューロンが減少させることで、大脳皮質の層構造に異常をもたらす恐れがあることが示唆された。