- 著者
-
松本 峰哲
- 出版者
- 種智院大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本年度は、『カーラチャクラ・タントラ』及び、『ウィマラフラバー』の翻訳研究と平行して、特に『カーラチャクラ・タントラ』の成立に重要な影響を与えたとされる『ナーマサンギーティ』の注釈書『アムリタカニカー』のテキスト再校訂及びコンピューター入力、そして翻訳研究を行った。再校訂作業が難航し、翻訳が進まなかったため、成果を外部に発表するまで至らなかった。しかし、従来指摘されてきた『カーラチャクラ・タントラ』と『ナーマサンギーティ』の関係について、特に本初仏に関する論議があまり行われていないなど、従来指摘されていた両教典の密接な関係性について、疑問を提示する箇所がいくつか見つかっており、この点に関しては、今後なるべく早い段階で発表したいと考えている。また、本年度は『ヴィマァプラバー』が、『カーラチャクラ・タントラ』の説かれた場所であると説明するインドのアマラヴァティーの遺跡を実際に調査し、許可を得て、博物館の収蔵物を写真撮影した。遺跡から発掘された遺品には、密教に関するもの非常に少なく、また、アマラヴァティーの遺跡自体も『ヴィマラプラバー』に説かれる仏塔のイメージとはかなり異なっていることから、なぜ『ヴィマラプラバー』に説かれるアマラバディーの異名とされるダーニヤタカタの仏塔が、現存するアマラバディーの仏塔と同一のものなのか、新たな疑問が浮かび上がった。