著者
角田 康五郎 松本 幸隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1555-1559, 1959-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

クメンを直接空気酸化してα-クミルヒドロ過酸化物を製造する際に,ある種の塩基性物質,すなわちアルカリ土類金属酸化物,過酸化物,弱酸のアルカリ金属塩等を加えると酸化が有利に実施出来る。本報では二,三の観点からこれらの塩基性物質(以後酸化添加剤と呼ぶ)の酸化における接触作用を検討した。クメンを空気酸化する時に,酸化の進行につれてα-クミルヒドロ過酸化物以外の酸化に有害な副生物が生成して来るが,上述の酸化添加剤は同一のα-クミルヒドロ過酸化物濃度に対して副生物量を減少させる。これは酸化添加剤が酸特に安息香酸を除去し,α-クミルアルコール,α-メチルスチレンの関与する分解反応を抑制する作用のあるところから,α-クミルヒドロ過酸化物の安定性を高めているためと考えられる。また酸化添加剤は見掛けの酸化速度を向上させるが,これは物理的な作用によるものである。酸化添加剤としては本報では,おもに過酸化バリウムについて検討し,その他の二,三のものとは酸化の物質収支より比較を行なった。