著者
辻 慶子 松本 真希 鷹居 樹八子 児玉 裕美 萩原 智子 岩田 直美
出版者
産業医科大学、産業医科大学学会
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.157-165, 2015-06-01 (Released:2015-06-13)
参考文献数
12
被引用文献数
1

快適な入院生活を過ごすとともに安全で確実な医療行為を行うには,医療施設の環境デザインの適切さが求められる.基礎看護学の単元「 環境」の授業では,医療施設,とくに病棟のイメージがつかないまま環境の学習をする看護学生が多く,その理解が不十分で患者の援助に繋がらないことが多く見受けられる.建築用コンピュータソフト(ウインドウズ8)上で動作する「3Dマイホームデザイナー Pro 8」を利用し,医療施設において患者に最適な療養環境としての環境デザイン学習の可能性を検討するために,平面図上の医療施設を作り3D画像に変換した後,コンピュータの画面上で病棟内を疑似歩行体験できる仮想病棟動画を作成した.動画は, a)「 病室」の壁の色彩を変化させたもの, b)「 病棟配置」はナースステーションの位置と病室の配置の違い, c)「 視力の低下を体験できる外来」では白内障による視力低下で視界がぼやけてみえる外来の3種類からなる.対照群は静止画群を動画と同様に(a,b,c)の3種類作成した.c)の静止画については説明書付きとした.作成した動画と静止画について看護学生と看護師にアンケート調査を行った.その結果, a) の動画・静止画において両者の視聴後の感想に差はみられなかった.またb)の動画は,看護学生と看護師の記述内容に違いがみられなかった.c)の動画は,看護学生・看護師とも患者の視点での記述が多かった.臨床経験のない看護学生は動画により病棟内を歩く疑似体験を通じて,視覚的・体験的に病棟の環境を理解できたと考える.また,看護教育において仮想病棟動画の活用は疑似体験ができることで,学生の準備状況に合わせた教育プログラムの作成が可能であることが推察できた.