- 著者
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松本 祐介
甲斐 恭平
山田 隆年
中島 明
佐藤 四三
- 出版者
- 日本臨床外科学会
- 雑誌
- 日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.7, pp.1786-1790, 2008 (Released:2009-01-06)
- 参考文献数
- 9
- 被引用文献数
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症例は73歳,男性.3年2カ月前から当院内科にて慢性膵炎として外来通院していた.当初よりCTにて膵背側に嚢胞性の腫瘤があり膵仮性嚢胞の疑いで経過観察されていたが1年前より徐々に腫瘤が増大し血中CA19-9の異常高値(5,240U/ml)を認めた.悪性腫瘍との鑑別が困難なため手術目的で当科紹介となった.開腹すると膵背側の腫瘤は約4cmで周囲の組織にはさほど炎症所見が無く腫瘍性病変を考え膵体尾脾切除,胆嚢摘出術,膵管胃吻合を施行した.病理組織学的検査にて病変は大小2個の嚢胞より成り嚢胞壁は重層扁平上皮で覆われ所々にリンパ濾胞も有しておりリンパ上皮嚢腫(Lymphoepithelial cyst)と診断された.経過は良好で術後2カ月のCA19-9は11.4U/mlと正常化した.今回われわれは慢性膵炎の経過中に偶然発見され膵仮性嚢胞の疑いで経過観察の後に手術となった症例を経験した.病変が経過とともに増大していることと慢性膵炎を伴っていることからその成因を推測する上で示唆に富む症例であった.