著者
松村 季三代 森嶋 登貴子
出版者
大阪夕陽丘学園短期大学
雑誌
大阪女子学園短期大学紀要 (ISSN:02860570)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.39-47, 1960-06-01

着てらくなきものを作る要点を二,三あげてみると 一.肩線が体に合っているか否か,肩線が身頃を吊しているのであるから重要なポイントとなる。一.アーム・ホールは深すぎないよう。浅すぎてつかえているのは論外だが,洋服を着なれない人に限つて深い袖ぐりを望むけれども,深い袖ぐりは袖がついた時,手の上げ下げが窮屈になる。一.アーム・ホールのゆとりは,深さよりも,わたり(巾)に求められる。又背巾に適当なゆるみを入れることは,らくなきものを作る原因となる。一.婦人服の特徴といえるバストのふくらみが,体に合っていなければ着易いきものは生れない。その他細かい点が重なり合い,着易いきものも着難いものも生じる訳で,要するにこれは単なる実験結果の報告であって,決して確定的なことは言えないのであるが,着心地の欄に於けるA^1^1/_<15>, B^9/_<15>, C^8/_<15>, D^1^5/_<15>が示すように,何れも半数以上は,着易い又は普通と答えているのであるから,一つの方法に徹底し,その長短をわきまえたら,何れを可,何れを否とも言い難いのではないかと思う。せめてこのモデル数を2倍から3倍位にして比較すれば,或は又新しくはっきりした数字が現われるかも知れない。実験結果が似たりよったりであったとすると,この研究は徒労に終ったものとも思われるけれど,型紙の違いと同様,出来上ったシルウェットが非常に違うということは,やはり発見であった。これにデザインの個性が入れば,自ずと異った雰囲気のきものが出来上ると考えられる。終りに実験の当初,一緒に着手しながら病気のため中断された中西麗子氏,60着の型紙の作製や,その他労力の多かった,下方妙子,長谷川歌子,民谷セツ子の諸嬢,又快よくモデルを引き受けて下さった方々に感謝いたします。