著者
鈴木 悠 三木 通保 大須賀 拓真 山中 冴 松村 直子 松原 慕慶 金本 巨万 藤原 潔 佐川 典正
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.44-50, 2017-12-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
18

妊婦に対して腹腔鏡手術を行う機会は近年増加しており,開腹手術と比して妊娠予後に差がないことが示唆されている.報告の多くは妊娠12週から16週までの間に手術が行われており,16週以降では少ない.今回我々は妊娠16週から18週の4症例に対して腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術を施行したので,文献的考察を加えて報告する.腫瘍径は7.5から9 cm 大で,3例は成熟嚢胞奇形腫,1例は漿液性嚢胞腺腫と成熟嚢胞奇形腫であった.手術時間は157分から232分であり,週数の進行とともに手術時間の延長を認めたが,術後の妊娠経過には異常を認めなかった.手術を行うに際しては,増大した妊娠子宮が障害にならないよう,トロッカーの位置は臍より頭側で,腫瘍患側におくことなどの工夫が必要であった.妊娠16週以降でも画像診断により術前に腫瘍の位置を確認し,トロッカーの配置などを工夫すれば,腹腔鏡下手術は安全に施行できると考えられた.