著者
宮上 順志 松橋 一雄 金沢 元美 矢内原 巧 中山 徹也
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.19-26, 1980-01-01

胎生期における胎児消化管生理解明の一助として、消化管ホルモンであるセクレチンを取り上げ,妊娠月数による母体血セクレチン値の推移像,胎児血中濃度と母体血との比較,胎児消化管組織申に於けるセクレチン含量の部位による相異を検した.併せてガストリン濃度についても同様の検討を行なった.I測定方法;1)血中セクレチン値はYanaihara et alの方法(1976)^<20>)によるRIA法,ガストリン値はGastrin-RIAkit(ダイナホット杜)により測定した.2)妊娠5カ月,6カ月中絶例につき胎児組織並びに胎盤組織申のセクレチン及びガストリンはWaterboiling法にて抽出,Sephadex G-25 Columnにてゲル濾過,凍結乾燥後に前記RIA法により測定した.II実験成績1)妊婦血中値 非妊婦・男子を対照としての妊婦124例についての成績では,妊娠により血中セクレチン値は増量し,妊娠末期に最高値248±150pg/mlに達する.ガストリン値は妊娠による変化はみられず平均65.4±36pg/mIであった.2)胎児血中値(i)セクレチン値は膀帯動脈血(UA)と騰帯静脈血(UV)中はそれぞれ460±166pg/ml,424±126pg/mlで胎児血は母体血(分娩時)の値307±158pg/mlに比し有意に高値を示した(p<0.05).(ii)ガストリン値はUA・Uv中でそれぞれ101±63pg/ml,91±38pg/mlで母体血(分晩時)の値67±22pg/mlに比しセクレチンと同様胎児血で有意に高値を示した(P<0.05).3)胎児組織中 immunoreactive Secretinは5カ月では小腸,6カ月では十二指腸に多量に存在し,消化管以外の大脳皮質中にも大量のセクレチンが検出された.immunoreactive Gastrinは胎児でも幽門部から十二指腸にかけて高濃度に存在した.