- 著者
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松永 一幸
古屋 純一
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.supplement, pp.24-28, 2023-09-30 (Released:2023-10-04)
- 参考文献数
- 5
緒言:脳卒中発症後は肺炎を合併しやすく,肺炎を合併した場合は機能的予後の悪化につながるとの報告がある。一方で,脳卒中発症早期からの口腔管理は,肺炎予防に有用とされている。今回,脳梗塞を発症した高齢患者に対して,肺炎予防のために入院早期から口腔管理を実施し,口腔環境および食事摂取状況を改善した症例を経験した。 症例:83歳男性,身長147.2 cm,体重52.7 kg(BMI 24.3 kg/m2)。2021年8月に左半身の脱力感を生じ,脳梗塞と診断された。入院当日の看護師による口腔評価後,入院3日後に歯科介入した。残存歯は上顎0本,下顎6本で,左下1・2番と右下3番は顕著に動揺し,周囲歯肉から排膿があった。上顎義歯は容易に脱落し,下顎義歯は残存歯の移動により,装着不可能であった。 経過:歯科介入前は均質なペースト食を2〜4割摂取していたが,口腔衛生管理および動揺歯の抜歯後は8〜10割摂取が可能となった。さらに義歯修理後は,不均質なペースト食の10割摂取が可能となった。入院17日後に回復期病院へ転院となったため,同病院の協力歯科医院へ継続的な口腔管理を依頼した。転院後48日時点において全粥・軟菜を自力摂取し,口腔環境も維持していると報告を得ている。 考察:本症例は,脳梗塞を発症した高齢患者に対して入院早期から口腔管理を実施できたことで,口腔環境および食事摂取状況の改善につながったと考える。