著者
宮永 顕正 小関 卓也 松澤 洋 若木 高善 祥雲 弘文 伏信 進矢
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.143-148, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

アラビノキシランは,植物細胞壁の成分の一つであり,β-1,4キシラン主鎖にα-1,2またはα-1,3結合でアラビノースが側鎖として結合している構造をとっている.α-L-アラビノフラノシダーゼは,そのアラビノキシランのキシラン主鎖と側鎖アラビノース間の結合を切断する酵素である.Aspergillus kawachii由来のα-L-アラビノフラノシダーゼB (AkAbf54) は,構造未知である糖質分解酵素ファミリー54に属しており,反応機構なども不明であった.われわれはこのAkAbf54のX線結晶構造解析を行った.AkAbf54をPichia pastorisで大量発現させ,結晶構造解析を行った.全体構造を明らかにしたところ,AkAbf54は触媒ドメインとアラビノース結合ドメインの二つのドメインから構成されていた.アラビノースとの複合体構造では,アラビノースが触媒ドメインに1分子,アラビノース結合ドメインに2分子結合していた.複合体構造および変異体を用いた実験などから,求核残基がGlu221,酸/塩基触媒がAsp297であることを明らかにした.興味深いことに隣り合ったシステイン残基Cys176およびCys177がジスルフィド結合を形成し,アラビノースを疎水的に認識していた.アラビノース結合ドメインは,糖質結合ドメイン (CBM) ファミリー13と似たフォールドをとっていた.しかし,糖リガンド結合部位やモチーフが異なるなどいくつか異なる点がみられた.これらのことを考慮に入れた結果,アラビノース結合ドメインは新規な糖質結合ドメインであるCBM42に分類された.われわれはCBM42の詳細な機能解析を行い,CBM42はヘミセルロースの側鎖の糖であるアラビノースのみを認識して結合するという,これまでには例のない新規な糖質結合ドメインであることを示した.