著者
小関 卓也 堀 茜 見原 好治 河本 かずさ 伏信 進矢 小宮 大 鈴木 健太郎 祥雲 弘文 若木 高善 村山 哲也 塩野 義人
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.111-116, 2012-05-20 (Released:2017-12-24)
参考文献数
30
被引用文献数
1

フェルラ酸は植物細胞壁に存在する最も豊富なヒドロキシ桂皮酸の1つで,ヘミセルロースのキシランにおいては側鎖のアラビノフラノースのO-5あるいはO-2の位置に,ペクチンにおいては側鎖のアラビノフラノースのO-2あるいはガラクトピラノースのO-6の位置でエステル結合している。また,フェルラ酸は5,5'-,8,5'-,8,8'-および8-O-4'-結合によるダイマーを形成し,キシラン,ペクチン,リグニンとの架橋を形作っている。麹菌Aspergillus oryzae RIB40のゲノム配列情報を基に,ヘミセルロースの効率的分解に寄与するフェルラ酸エステラーゼと類似する遺伝子配列をいくつか見出し,それら遺伝子をクローン化し,Pichia pastorisで発言させた。それぞれのリコンビナント酵素のうちAoFaeBとAoFaeCはタンナーゼファミリーのフェルラ酸エステラーゼで,一次構造と一般的性質は似ていたが,いずれもタンナーゼ活性は検出されず,また,それぞれの酵素はシナピン酸エステルに対する特異性が異なっていた。AoPrbAはAoFaeBおよびAoFaeCと一次構造は類似しているものの,フェルラ酸エステラーゼ活性やタンナーゼ活性は検出されず,4-ヒドロキシ安息香酸エステル特異的なエステラーゼで,タンナーゼファミリーに分類されるエステラーゼは,その多様性が示唆された。
著者
宮永 顕正 小関 卓也 松澤 洋 若木 高善 祥雲 弘文 伏信 進矢
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.143-148, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

アラビノキシランは,植物細胞壁の成分の一つであり,β-1,4キシラン主鎖にα-1,2またはα-1,3結合でアラビノースが側鎖として結合している構造をとっている.α-L-アラビノフラノシダーゼは,そのアラビノキシランのキシラン主鎖と側鎖アラビノース間の結合を切断する酵素である.Aspergillus kawachii由来のα-L-アラビノフラノシダーゼB (AkAbf54) は,構造未知である糖質分解酵素ファミリー54に属しており,反応機構なども不明であった.われわれはこのAkAbf54のX線結晶構造解析を行った.AkAbf54をPichia pastorisで大量発現させ,結晶構造解析を行った.全体構造を明らかにしたところ,AkAbf54は触媒ドメインとアラビノース結合ドメインの二つのドメインから構成されていた.アラビノースとの複合体構造では,アラビノースが触媒ドメインに1分子,アラビノース結合ドメインに2分子結合していた.複合体構造および変異体を用いた実験などから,求核残基がGlu221,酸/塩基触媒がAsp297であることを明らかにした.興味深いことに隣り合ったシステイン残基Cys176およびCys177がジスルフィド結合を形成し,アラビノースを疎水的に認識していた.アラビノース結合ドメインは,糖質結合ドメイン (CBM) ファミリー13と似たフォールドをとっていた.しかし,糖リガンド結合部位やモチーフが異なるなどいくつか異なる点がみられた.これらのことを考慮に入れた結果,アラビノース結合ドメインは新規な糖質結合ドメインであるCBM42に分類された.われわれはCBM42の詳細な機能解析を行い,CBM42はヘミセルロースの側鎖の糖であるアラビノースのみを認識して結合するという,これまでには例のない新規な糖質結合ドメインであることを示した.
著者
小関 卓也 岩野 君夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.510-517, 1998-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

焼酎製造には様々な原料が使用されており, その原料の違いによる個性が備わっていると考えられる。しかしながら, 芋焼酎でその特徴香が甘藷から由来するモノテルペンアルコール類であることが明らかにされていることなど以外に, 原料由来の香味についての詳細な研究は多くはない。本解説では焼酎, 特に泡盛中のバニリンの由来を探求し, バニリンが植物細胞壁のリグニンから麹菌の酵素, 蒸留中の化学反応, さらには貯蔵中の化学反応を経て生成されることを明らかにし, さらには関与する酵素の遺伝子レベルでの研究も含めて, 一連の研究成果について紹介していただいた。このような研究の積み重ねにより, 焼酎をはじめとする酒類の香味に対する原料の意義や, 貯蔵も含めた製造工程の意義が明らかにされ, 酒類の多様化にも寄与していくことが期待される。