著者
松瀬 留美子 坂本 剛 松瀬 善治
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-66, 2018-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
8

障害者差別解消法(2016 年)が施行され、各大学では自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder : ASD)学生への修学支援について合理的配慮の観点から新たな制度の構築が試みられている。本稿では、私立大学におけるASD学生への修学支援の取り組みを紹介し、それらの支援実践を通して明らかになった課題を講義担当教員が直面する課題として焦点をあてて検討した。第一に、小規模大学における取り組みとして、施行年度の障害学生の入学時相談、講義時における支援申請についての資料を提示した。第二に、複数の大学における事例をヴィネットの形式で紹介し、教員がASDと関わるときに配慮が求められる課題として、①講義実施と講義内行動、②定期試験の時間延長と成績評価、③意思疎通と学内外活動、④教員側のASDに対する知識と指導経験量の差、⑤体験から学ぶことの5 点を取り上げ、合理的な配慮を検討する際に有用な知見を導き出して考察した。また、ASD学生への合理的配慮として、どこまでを合理的配慮の範疇に該当するのかは、各大学が実情に合わせて事例を積み重ねて精査をしていく必要がある。さらに、合理的配慮を検討する際には、ASD学生の社会参加に有用であるという基本的視座に立つということと、全学でASD学生を受け入れるような風土を醸成していくことが重要であると論じた。