著者
松田 光子 森鍵 祐子 細谷 たき子 小林 淳子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.10-19, 2018 (Released:2018-02-10)
参考文献数
27

目的 新任期保健師の集団・地域を対象とした実践能力の到達度を把握し,家庭訪問の実施状況,指導体制,家庭訪問に対する認識との関連を明らかにすることを目的とした。方法 山形県内の行政保健師で,新任期(1∼5年)保健師64人を対象とし,無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本属性,家庭訪問の実施状況と指導体制,家庭訪問に対する認識,および新人看護職員研修ガイドライン∼保健師編∼の保健師到達目標項目のうち専門職としての能力Ⅱである集団・地域を対象とした実践能力の14項目とした。14項目の到達度について「ひとりでできる」を100,「ひとりでできない」を0とするVASで自己評価による回答を求め,独立変数との関連をt検定,Pearsonの相関係数により分析した。結果 有効回答数は52人であった。家庭訪問の指導体制との関連では同行訪問の経験がある者はない者より集団・地域を対象とした実践能力である「健康課題に気づく」,「人々の力を見出す」,「目標設定と方法の選択」,「活動の評価」の到達度が有意に高かった。訪問記録を提出している者は「健康危機管理体制の理解説明」,「健康危機対応の理解説明」の到達度が有意に高く,訪問記録提出時の上司のアドバイスがある者は「アセスメント」の到達度が有意に高かった。家庭訪問の認識との関連では「対象の生活に合わせて行う活動である」,「家族全員の健康を考えながらの活動である」,「多職種と協働しながらの活動である」と認識する者ほど「目標設定と方法の選択」の到達度が有意に高かった。結論 同行訪問や記録の提出,記録提出時のアドバイス,保健師の家庭訪問に対する認識が新任期保健師の集団・地域を対象とした実践能力に関連することが明らかとなった。