著者
水野 幸一 仲島 麻里可 足利 光平 中野 恵美 松田 史郎 宮﨑 秀和 佐々木 俊雄 原田 智雄 明石 嘉浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.972-979, 2013-08-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
13

近年,高齢化に伴い日本人の動脈硬化性疾患が増加してきたが,一方で発症年齢の若年化が問題となっている.特に急性心筋梗塞では,若年期での発症機序や冠危険因子の関与などは現時点で見解が一致していない.当院で2006年2月開院以後2011年1月までの5年間で急性心筋梗塞に対して緊急経皮的冠動脈インターベンション(percut­ aneous coronary intervention;PCI)を施行した218症例中の35歳以下の5症例の臨床的背景,冠危険因子,冠動脈病変背景および臨床経過を今回検討したので報告する.5例とも男性,喫煙者で,4例が夜間から早朝の土木作業や運転などの不規則勤労者であった.4例がBMI 25.0以上の肥満であり,冠危険因子では4例が高血圧,5例ともに脂質異常症があり,1例のみ糖尿病,家族歴があった.臨床的には5例ともに来院時Killip分類Ⅰ,冠動脈1枝病変で,緊急PCIを施行して早期に再灌流が得られ合併症なく退院した.その後5例とも再狭窄を生じず,心血管イベントの再発も認めていない.以上の共通点は,対極的な86歳以上の緊急PCI施行症例と比較することにより一層鮮明になった.今回経験した5症例は,当院の急性心筋梗塞で緊急PCIを施行した症例の3%未満と低頻度であったが,臨床的背景,冠危険因子などで多くの共通点が認められた.臨床経過では,5例とも短期的には予後良好であったが,長期的予後まで考慮すれば生活習慣の改善を中心に,冠危険因子のより厳格な管理が重要と考えられた.