著者
松田 武雄
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.518-529[含 英語文要旨], 2007-12

本稿は、国家的価値の浸出を抑制、制御することを睨みながら、社会教育概念の再解釈を通して社会教育におけるコミュニティ的価値の再検討を行うことを目的としている。最初に、近年注目されている社会関係資本論と社会教育を関連づけ、社会教育におけるコミュニティ的価値を再検討することの現代的意義について考察している。次に、社会関係資本と関連づけて社会教育概念の歴史的な再解釈を行うとともに、社会教育におけるコミュニティ的価値をめぐる議論を歴史的に跡づけ、問題の所在を明らかにしている。最後に、国家的価値に抗する社会教育におけるコミュニティ的価値について、社会教育概念の歴史的再解釈を踏まえて考察している。この際に、コミュニティの「共通善」や個人の善をめぐる英語圏の政治哲学の議論を、社会教育におけるコミュニティ的価値を考察するための概念装置として援用し、コミュニティ的価値の創出(相互学習)をめぐる理論的な枠組みについて検討した。