著者
吉田 文
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.164-175, 2014

本論文は、「グローバル人材の育成」をめぐる諸アクターの行動を分析し、グローバル人材を論じつつも、それがローカルな視点に立脚するものであるかを明らかにする。<br> 分析の結果、1.2000年代に入り産業界は海外勤務従業員の育成を課題としてグローバル人材を論じはじめ、2.2000年代後半には、それが大学の課題となり、3.文科省は競争的資金で大学を誘導し、4.大学は海外留学と実践的な英語教育に力を入れ、5.小規模大学もグローバルを鍵とした学部・学科の改編を実施していることが明らかになり、これらが時間的にも空間的にもローカルな閉じた議論であることを指摘した。
著者
小野 雅章
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.542-553, 2007-12-28 (Released:2018-12-26)

本稿は、1935年の天皇機関説事件を契機に近代天皇制と教育との関係に大きな質的転換があったことを、御真影と学校儀式の取り扱いを検討する中で明らかにしようとするものである。具体的には、国立公文書館所蔵の文部省関係資料を再検討するとともに、筆者が調査した府県庁文書をその検討の対象に加え、(1)昭和天皇・皇后御真影下付手続きに関する諸事項とそのとき発覚した御真影汚損の実態とそれに対する府県レベルでの対応、(2)上述の事態を深刻に受け止めた文部省が各府県に係官を派遣し「御真影奉安状況視察」を実施し「奉護」形態状況把握に努め、その上で「行政指導」とでもいう形で御真影「奉護」規程の「統一化」を図ったこと、(3)さらに、1936年以降の文部省は、神社様式奉安殿の普及に努めると共に、「強制」下付という形で高等教育機関から初等教育機関すべてを対象に御真影の「強制」下付を実施するのと同時に、四大節学校儀式挙行を通牒で強制的に推進したことを明らかにした。
著者
小野 雅章
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.542-553, 2007-12

本稿は、1935年の天皇機関説事件を契機に近代天皇制と教育との関係に大きな質的転換があったことを、御真影と学校儀式の取り扱いを検討する中で明らかにしようとするものである。具体的には、国立公文書館所蔵の文部省関係資料を再検討するとともに、筆者が調査した府県庁文書をその検討の対象に加え、(1)昭和天皇・皇后御真影下付手続きに関する諸事項とそのとき発覚した御真影汚損の実態とそれに対する府県レベルでの対応、(2)上述の事態を深刻に受け止めた文部省が各府県に係官を派遣し「御真影奉安状況視察」を実施し「奉護」形態状況把握に努め、その上で「行政指導」とでもいう形で御真影「奉護」規程の「統一化」を図ったこと、(3)さらに、1936年以降の文部省は、神社様式奉安殿の普及に努めると共に、「強制」下付という形で高等教育機関から初等教育機関すべてを対象に御真影の「強制」下付を実施するのと同時に、四大節学校儀式挙行を通牒で強制的に推進したことを明らかにした。
著者
横井 敏郎
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.186-195, 2018-06-30 (Released:2018-10-17)
参考文献数
39

2016年12月に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立した。本稿は本法制定論議の時期区分と主な論点、制定に関わった主体・潮流の整理を通じて本法制定の経過と帰結を考察した。フリースクール団体の提案が法案審議に進んだのは、政策決定構造の変化を背景に、政府の能力開発・社会投資政策の枠組みに位置付けられたからである。法案についての厳しい意見対立は、教育の新たな政治的対立図式が顕在化したものと捉えられる。しかし、不登校対策を主な内容とする法の成立という帰結は、学校を越えることの困難をも示している。
著者
今井 康雄
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.188-201, 2015

エビデンスに基づくことで教育は劇的に改善されるとする主張が興隆しているが、教育の領域でエビデンスはその証拠能力に依拠する限り無力であり、エビデンスの威力はそのレトリック的効果に由来する。エビデンス批判もこのレトリック的効果に目を向けており、教育を支えるに足るエビデンスの可能性は真剣に考慮されていない。「エビデンスに基づく医療」の状況を検討し、エビデンスの概念史を再構成することを通して、エビデンスは教育を支えるのか、それともその基盤を掘り崩すのか、といった二者択一には収まらない、エビデンスと教育の複雑な関係が浮き彫りになる。
著者
神林 寿幸
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.25-35, 2015

近年、教員の多忙化が政策課題とされており、教育学研究でも事務処理などの周辺的職務に伴う教員の多忙化が複数指摘されてきた。しかしこれらの指摘は十分な実証に基づくものではなかった。そこで本稿では現存する1950~60年代と2000年代後半の教員の労働時間調査について、一般線形モデルを用いた比較を行った。その結果、1950~60年代に比べて、2000年代後半以降の教員は、事務処理等の周辺的職務に長い時間を費やしているとは必ずしもいえず、他方で教育活動(特に課外活動)に費やす時間が長いことが明らかとなった。
著者
今井 康雄
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.188-201, 2015 (Released:2016-05-18)
参考文献数
42
被引用文献数
1

エビデンスに基づくことで教育は劇的に改善されるとする主張が興隆しているが、教育の領域でエビデンスはその証拠能力に依拠する限り無力であり、エビデンスの威力はそのレトリック的効果に由来する。エビデンス批判もこのレトリック的効果に目を向けており、教育を支えるに足るエビデンスの可能性は真剣に考慮されていない。「エビデンスに基づく医療」の状況を検討し、エビデンスの概念史を再構成することを通して、エビデンスは教育を支えるのか、それともその基盤を掘り崩すのか、といった二者択一には収まらない、エビデンスと教育の複雑な関係が浮き彫りになる。
著者
藤村 正司
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.167-180, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
27

なぜ大学教育と労働市場の接続が、非連続になるのか。本稿は、このリサーチ・クエスチョンに対して景気循環とは異なる構造的要因に注目する。1993年以後、わが国の私学主体の高等教育システムには、学歴インフレによる「機会の罠」が生じている。大卒新規労働者は、労働市場における世代間の置換効果にも晒されてきた。就活におけるメンタリティが内定獲得を、マッチングの質が大卒労働者の能力発揮を規定している。
著者
児島 博紀
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.36-47, 2015 (Released:2016-05-19)
参考文献数
34

本稿は、J. ロールズによるメリトクラシーへの批判的視点を検討することで、機会の平等をめぐる議論に従来と異なる視点を提供することを試みる。機会の平等を論ずる際、しばしば自由と平等という理念的対立が強調され、ロールズは平等の側に位置づけられる。これに対し本稿は、平等主義の理論的困難をふまえつつ、むしろロールズの主張には自由の観点が見出せることを指摘し、最終的に平等な自由の再定義の必要性を主張する。
著者
吉田 文
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.178-189, 2020 (Released:2020-09-30)
参考文献数
33

本稿は、1991年の大綱化以降の30年間に及ぶ大学の教育改革に関して、1.文部(科学)省の政策(審議会答申と競争的資金事業)、2.それに対する大学の反応(改革の実施率と大学教育関係学会)、3.この両面から大学教育改革がもたらした意味を考察することを目的とする。分析の結果、次第に改革が手段ではなく目的化し、改革に関する大学の自由裁量の余地がなくなったこと、大学はそこから抜け出せない現実があることが明らかにされた。
著者
仲田 康一
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.450-462, 2011-12

保護者に対し学校に協力する特定の行動を求め、同意の上署名をして提出する「確認書」実践を行う学校運営協議会に着目し、その取組を実現させた論理と帰結を実証的に検討した。その結果導出されたのは、学校選択制下で、学力という成果を求める学校運営協議会が、地域の社会関係を介して保護者に対する問責を生じさせ、保護者を統治する様であった。保護者は然るべき行動を取ることができない場合があるが、それは社会的要因の制約による部分があるにもかかわらず、それへの顧慮は剥ぎ取られたままであった。
著者
小野 方資
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.241-252, 2015 (Released:2016-05-18)
参考文献数
12

「エビデンス」という語は、教育政策の批判的検証の意味で用いられていた。しかし政策形成に力を及すアクターにより、「エビデンス」の語義が変化していく。この語は、政策形成に影響力あるアクターが予め設定した達成すべき「条件」の意味となる。そして、このようなアクターの意向により切り取られた「結果」を「エビデンス」とし、これを踏まえるべきと政策に条件づけをし、当該アクターの意向を反映させようとする政治性も観察される。