著者
松田 義信 窪田 文武 縣 和一 伊藤 浩司
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.150-156, 1991-04-30
被引用文献数
7

トウモロコシを対照作物に用いて,ネピアグラス個体群における超多収性要因を解明した。1.ネピアグラスは,生育初期段階(植え付け-6月)では,茎数の増加が顕著であり,植え付け後23日には茎数密度は約100本/m^2に達した。茎葉は水平方向に伸長し,LAIが低い生育段階における光利用効率を高める受光態勢となった。2.生育中期段階(7月-8月)になると,自己間引きにより茎数が急激に減少し,約25本/m^2となったが,夏季高温下で葉の展開速度が速まり,高い葉面積指数(LAI=13.3)の個体群が形成された。この間,茎葉の伸長が水平方向から垂直方向に変わるため,吸光係数(K)が低下する等,群落構造に変化が起こり,個体群は長期間,高NAR(純同化率)を維持した。CGR(個体群生長速度)の最大値は,53.3g/m^2/dayであった。3.生育後期段階(9月-11月)では,群落下層部葉の枯死が増加するが,1茎当りの出葉数が多いためLAIは高い状態に維持された。4.トウモロコシに比較して,ネピアグラスの群落構造は極めて柔軟性に富み,いずれの各生育段階での光利用効率が高いため,物質生産能力が高まり,最終収量ではトウモロコシの2倍の値(4.4kg/m^2)となった。