著者
松田 豊治
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, 1981-12-15

昭和52年8月7日から始まった度重なる有珠山の噴火は, 山地の荒廃や地盤変動をもたらした。特に, 二次的災害である泥流発生は有珠山周辺の町や村など各所に多大の被害を与え, 死者を出すに至った。本報では, まず有珠山の火山活動を概説し, 次に今回の噴火による泥流発生状況の記録を詳述している。軽石や火山灰などの噴出物の堆積状況は, 地域によってその粒度, 厚さ, 累積状況, 表層の固化状態などに著しく影響することを明らかにしている。また, 地形変動と地震の関連を述べ, 3つの重要な砂防渓流の状態を概述している。防災対策の立案に当たって, 降灰堆積層が侵食・拡大し泥流化するのを防止するための調節ダムと砂防ダムの新設, 下流部の流水をすみやかに湖水へ流下させる流路工が重点的に検討された。最後に, 採用された具体的工法である鋼製スリットダムおよび鋼製自在わくを説明し, 安定性, 構造機能, 施工性, 経済性などの特長を述べている。