著者
松繁 弘之
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.17-28, 2002-04

本稿の主題は『字音仮字用格』の冒頭に位置する「喉音三行辨」を分析することである。第一に,「喉音三行辨」の理論的位置を明らかにする。第二に,「喉音三行辨」の理解に必要不可欠な二つの図表を分析する。解釈の骨子は次のやうになる。宣長は喉音三行をまづ区別して,それを「喉音三行分生図」により表現する。そして,その区別した三行を関係づけるために「軽重」の概念を導入し,その関係を「喉音軽重等第図」により表現する。特に,その「軽重」の概念が雅楽の「唱歌」に着想を得たものであり,それが音の高低を意味すること,即ち「いえあおう」と高音から低音へといふ序列をなすこと,を述べる。