著者
松野 進
出版者
山口県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.1, pp.65-71, 2002 (Released:2011-03-05)

稚ナマコへのテトラサイクリン(TC)による標識方法を検討した結果、TCを餌料に約10%添加して約2週間経口投与することにより、またはTC濃度100ppmで4日間、浸漬投与で囲食道骨が最も安定して標識されることが分かった。標識した稚ナマコを海域に放流し、追跡調査を行った結果、161日後に標識の確認ができ、従来、唯一有効とされてきた焼き印標識より約2ヶ月間有効期間が長かった。ナマコが約125mm程度に成長して標識部位に新たな骨組織が厚く被った場合には囲食道骨の直接検鏡によるTC標識の識別は困難となるため、有効期間は成長状況にもよるが、半年間と推察された。放流から161日後にTC標識が確認できた再捕個体群の可食部からは、細菌に対して活性を有するTC系抗生物質は検出されなかった。