著者
廣瀬 英雄 松隈 和広 作村 建紀
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.102-109, 2011-07-20

感染症拡大を予測するパンデミックシミュレーションはシナリオによるシミュレーションとして取り扱われてきたが,実際にパンデミックが起こり始めると,観測データを使いながら将来どのようになるかを予測できるかということが重要になってくる.モデルの構造を仮定し,観測データを利用してモデルのパラメータを同定しながら予測を進める方法論は,データ同化とかグレーボックスとも呼ばれているが,パンデミック予測を行ううえでもこのことが必要になってくる.ここでは,微分方程式によるSIRモデルのパラメータを観測データから精確に推定するBBS法を提案し,またこれまで実際に観測された,SARS,口蹄疫のデータを用いて予測を行った結果について議論する.また,これをtruncatedモデルによる予測結果とも比較する.比較の結果,SIRモデルは最悪のケースを早期に予測する可能性があるが,truncatedモデルはかなり無力であることが分かった.