著者
廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.266-274, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
37

災害が拡大するとき最終的にその規模がどの程度までになるかを早期に予測する問題について考察する.そのため,災害の起こる時期をステージとして想定し,各ステージに適切な予測法について考える.災害が拡大する中,いつ峠を越すのかという問題は最も興味のある問題の一つであるがそれは峠を越えたら分かるというような場合もある.そのようなことを避けるような様々な早期の最終段階予測を行う方法について述べる.災害の中でもここでは特に感染症流行の予測について取り上げ,感染拡大の最中に早期に効果的に予測する方法と予測結果について解説する.
著者
廣瀬 英雄 松隈 和広 作村 建紀
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.102-109, 2011-07-20

感染症拡大を予測するパンデミックシミュレーションはシナリオによるシミュレーションとして取り扱われてきたが,実際にパンデミックが起こり始めると,観測データを使いながら将来どのようになるかを予測できるかということが重要になってくる.モデルの構造を仮定し,観測データを利用してモデルのパラメータを同定しながら予測を進める方法論は,データ同化とかグレーボックスとも呼ばれているが,パンデミック予測を行ううえでもこのことが必要になってくる.ここでは,微分方程式によるSIRモデルのパラメータを観測データから精確に推定するBBS法を提案し,またこれまで実際に観測された,SARS,口蹄疫のデータを用いて予測を行った結果について議論する.また,これをtruncatedモデルによる予測結果とも比較する.比較の結果,SIRモデルは最悪のケースを早期に予測する可能性があるが,truncatedモデルはかなり無力であることが分かった.
著者
廣瀬 英雄 豊坂 裕樹
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.270-277, 2009-06-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
21

人から人へ感染するように変異した鳥インフルエンザが現れれば,世界中で多数の死者が出ると予想され人類にとって脅威となる.どの程度の被害が出るのか,どのように防げば被害が少なくなるのかは経験がないために全く予想できない.そこで,いくつかの考えられる条件のもとでシミュレーションを行い,災厄の見当をつけることを考える.この方法は従来の対比する対象がある場合のシミュレーションの枠組みと異なり,いわばシナリオにもとづくシミュレーションである.ここでは,感染病が蔓延するパンデミックシミュレーションについて,まず計算モデルの考え方を示し,次に比較的単純な街のモデルを使ってシミュレーションを行った結果について述べる.詳細な条件設定が可能でも計算コストがかかるマルチエージェントシミュレーション法,マクロな傾向しか捉えられないが簡便な微分方程式を用いる方法,多くのケースを比較的短時間で確認できる両者を組み合わせたハイブリッド法を紹介し,パンデミックを阻止する効果的な方法について考察する.swine fluについても少し述べる.
著者
豊坂 祐樹 藤尾 光彦 廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.306, pp.13-17, 2006-10-13
被引用文献数
1

21世紀人類が直面する恐れのあるパンデミックインフルエンザ,あるいはテロ行為による疫病感染拡散などに対してその社会的影響は極めて大きいことを考えると,リスク回避という面から様々な条件のもとでの疫病感染の拡散状況を事前に知っておくことが望ましい.ここでは,空気を媒体にして人から人へ伝染する疫病を想定した人と人とのネットワーク構造をモデル化した上で,初期感染者から未感染者へと疫病が伝染するシミュレーションを行い,最終的なパンデミック段階の感染者蔓延状況を予測することを行った.このことにより,新たな疫病のアウトブレイクやテロ行為による疫病蔓延に対するリスク回避への準備や対策を講じることが可能となる.
著者
河野 翼 廣瀬 英雄
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.41-44, 2012

パンデミックによる感染モデル,ソフトウエアの故障成長モデルとして用いられるコンタクトモデルの確率分布に対して,パンデミック初期,あるいは故障がはじまって間もない時期の観測データを用いて,パンデミック終息時の予測,あるいは故障終息時の予測を行なう際,統計的打ち切りモデル(truncatedモデル)を用いることがある.このとき,終息予測値は低めに見積もられることがあり,このとき災害対策上は危険側に予測されることになる.ここでは,このような推定現象についての考察を行ない,より正確な予測法について考える.故障の背後分布にワイブル分布を仮定した場合について,truncatedモデル,ワイブル微分方程式モデル,SIRモデル間での予測結果の比較を行う.
著者
豊坂 祐樹 廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.232, pp.31-36, 2009-10-09
参考文献数
23

常微分方程式によるSIRモデルとマルチエージェントモデルMASを組み合わせて,パンデミックシミュレーションを効率的に行うMADEモデルを提案し,また,その妥当性についても検証を行なってきた.パンデミックシミュレーションは観測例が極めて少ないので通常はシナリオによるシミュレーションが行なわれる.しかしながら,2009年4月にメキシコに端を発したと思われる新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)はまれにみるパンデミックの実例となっている.9月現在,まだ感染は拡大し続けており,今後の動向は不明である.ここでは,観測されたパンデミック初期のデータを用いて,感染蔓延がどのように広がるかという予測をシミュレーションによって行う.また,他の統計的な予測方法との比較も行う.シミュレーションによる予測が観測結果とどのように合致しているか,あるいは異なっているかについては未知であるが,初期段階でのこのような取り組みは重要と考えるので,現段階でできる結果について報告する.MADEモデルによれば,2009年7月までの観測データを用いた場合の日本での感染者総数の予測値は約3,000万人,全世界では5億人程度と予測された.
著者
廣瀬 英雄
出版者
広島工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

学生の習熟度がますます多様化する時代を背景に、学生それぞれの習熟度にきめ細かく対応できる知的学習支援システムを充実させる期待は一層高くなる傾向にある。このため、本研究では、まず利用価値の高い大規模な知的学習支援システムの構築を目指すことを目的とし、項目反応理論など現代テスト理論を評価法に加味した上で、欠測データに対しても習熟度がロバストに推定できるようなアルゴリズムを構築してきた。その際、対象科目を大学数学基礎科目(微積分と線形代数)に特化した上で、3000問以上の設問を準備し、1000人規模の大学入学生全員に一斉にテスティングが行える大規模オンラインコンピュータシステム環境を整えた。次に、刻々と蓄積されるオンラインデータベースを用いて、さまざまな方向からの統計的な分析を行ってきた。これまで実施してきたラーニングアナリティクスから得られた知見は次のとおりである。(1)入学直後のプレースメントテスト、毎授業のオンラインテスト、および期末試験との相互関係を調べると、プレースメントテストから期末試験の結果を予測することは困難であるが、蓄積されるオンラインデータに提案した最近傍による類似性を適用すれば期末試験の結果を学期途中からでもある程度の確率で予測することが可能である。(2)アダプティブオンラインテスティングから得られた応答マトリクスは欠測データがかなり多いため問題の困難度の推定が難しいが、応答マトリクスを操作することによって、問題の困難度の推定値を一部求めることは可能である。さらに、複数大学間での連携協調により共通的なプラットフォームを構築し利用価値の高い大規模な知的学習支援システムの構築を目指すこととして、教科書の付録につけた「Webアシスト演習」に蓄積されてきているアクセスデータから、線形代数、微分積分、確率・統計、基礎物理の4つの科目の授業支援を行っている。
著者
滝本 清仁 廣瀬 英雄
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
日本計算機統計学会大会論文集
巻号頁・発行日
no.22, pp.17-20, 2008-05-22

インターネットアクセスなどにより蓄積された多大な顧客情報データベースを用いて,特定の顧客の潜在ニーズを探索しながら行動パターン予測し,顧客が嗜好する商品を薦める推薦システムが最近よく用いられている.システムのアルゴリズムとして協調フィルタリングが用いられる場合があるが,ここでは協調フィルタリングにマトリックス分解法を組み込んだときの予測精度について述べる.