著者
板倉 幸枝 大谷 亨
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
pp.2017-0011, (Released:2017-05-22)
参考文献数
13

ポリグリセロールデンドリマー(PGD)はL-アルギニン(Arg)と106 (M-1)オーダーの極めて高い結合定数を示す.この現象に着目し,がん細胞へのArgデリバリーの可能性を検証するため,葉酸(FA)もしくはBiotinをがん細胞標的リガンドとして修飾し,がん細胞表面上に存在するこれら受容体との相互作用を介してがん細胞へ選択的にArgを送達するキャリアとしての評価を行った.第三世代のPGD (PGD-G3)とFAもしくはBiotinをエステル化反応させたところ,PGD-G3一分子あたり一分子のリガンドが導入された.FA受容体過剰細胞,biotin受容体過剰細胞,どちらの受容体もない細胞を用い,Arg取り込み能を評価したところ,一部の細胞ではArg取り込みに伴う蛍光強度の増大がみられたことから,特異的なリガンド–受容体相互作用を介した取り込みの可能性が示唆された.