著者
寺澤 捷年 板澤 正明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.199-204, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
11

吉益東洞の伝記によると,彼は1752年に南部侯を往診している。しかしこの伝記には治療過程は記されていない。 最近筆者らは『雑書』という史料を見いだした。この書物は盛岡南部藩の家老によって記された日記である。この日記には東洞の南部侯に対する治療の詳細が記されている。本稿はこの日記を紹介し,併せて吉益東洞の具体的な行動について報告することを意図した。これは吉益東洞関連の史料として『東洞全集』出版(1917年)以来の意義有る発掘である。
著者
寺澤 捷年 板澤 正明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.414-418, 2019 (Released:2020-03-06)
参考文献数
13

著者らは先に吉益東洞が1752年に盛岡南部藩主を往診したことについて報告した。本稿では東洞の往診の後に起こった出来事を南部藩家老によって記された日記『雑書』に基づき調査した結果を示した。東洞の治療にもかかわらず藩主の疾病は改善せず,最後は死亡した。この時,東洞の弟子三人が藩医として南部藩に居たが,日記は藩主の没後にこの三人が解雇あるいは減給の処分を受けたことを記している。これは吉益の革命的医学思想と方法論が,当時,十分に理解されず,また評価されなかったことを示している。