著者
板谷 至 宮田 喜次郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.64, pp.9-12, 1972-07-31

水稲の登熟に関する研究は多く、気温との関係について相見らは酵素活性の面から、長戸らは主として品質の面から検討を行なつている。それらの結果によると、高温条件下では初期の乾物の増加はすみやかであるが、早く停止するために粒型は長さや巾の割に厚みがなく、千粒重も軽くなるといわれている。一般に暖地では登熟期の気温は高すぎるように思われるが、中山によると北陸においても登熟期が高温で、同一品種でも山形や長野で栽培されたものより登熟日数が短かいことを報告している。静岡県においても年々作期が早まり高温条件下で登熟するため、地力の低い秋落田が多いことと相まつて、登熟向上は益々重要な問題になつてきている。一方、高温登熟性の品種間差異に関する研究は、インド型品種と日本型品種の比較研究の中などにみられるが、概して少ないようである。そこで、以上のような観点に立つて、主として品種生態の面から高温適応性について検討を進めていきたい。