著者
林 敬義
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.203-211, 1975

台湾台中市およびその近郊在住の台湾人について,四つの血球型(ABO,MNSS,P,RH),四つの血清型(Hp,Tf,Gm,Km)および四つの赤血球酵素型(PHs,PGM,6-PGD,ADA)の分布を調べ,その成績を近隣の諸集団のそれと比較検討した。<br>ABO,MN,Rh式血球型については,台湾人,南中国人における中島らの報告と,また酵素型の成績については,日本在住の中国人における豊増のそれと近似した成績が得られた。<br>総括的にみると,血球型およびHp,Km血清型の遺伝子頻度については,台湾人と日本人におけるよりも台湾人と台湾山地の人の間において著しい違いがみられる。逆にGm遺伝子に関しては,台湾人では高い頻度でGm1,5がみられ,日本人と著しい対比を示している。台湾人のGmパターンは高い頻度でGm1,5をもつことで特徴づけられるが,このことは東南アジアの集団に共通にみられ,この点,むしろ台湾山地の人とよく似ている。<br>血球酵素型については,台湾人と台湾山地の人との間のPHSA遺伝子頻度にみられる有意の差を除いて,台湾人,日本人及び台湾山地の人三者の間には著しい差は認められない。