著者
林 繁和 神部 隆吉 本田 亘 佐々木 昌輝
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.2345-2352, 2005-10-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
44

急性感染性腸炎の内視鏡診断の古くは細菌性赤痢を中心に直腸鏡を用いて行なわれ,S状結腸鏡の時代を経て現在の全大腸内視鏡へと観察範囲が広がるにつれて新知見が加わり,またカンピロバクター腸炎や腸管出血性大腸菌(O157)腸炎など新しい疾患も出現し,その意義や重要性が認められるようになってきた.急性感染性腸炎はしばしば血便を伴うことから,鑑別診断上便の細菌培養結果を待たずに大腸内視鏡検査がなされるが,カンピロバクター腸炎ではバウヒン弁上の潰瘍,腸炎ビブリオ腸炎ではバウヒン弁の腫大,びらん,終末回腸のびらん,腸管出血性大腸菌腸炎では深部大腸程高度な虚血性病変など,病変部位と内視鏡像の特徴から起因菌の推定も可能である.迅速な治療のみならず,スコープの洗浄,消毒など二次感染防止という点でも急性感染性腸炎の内視鏡所見を熟知しておくことは大腸内視鏡施行にあたって極めて重要である.
著者
林 繁和 荒川 明 加納 潤一 加賀 克宏 宮田 章弘 渡辺 吉博 塚本 純久 小池 光正
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.2434-2438_1, 1991

症例は71歳,男性,海外渡航歴なし.1982年9月より粘血便出現,翌年1月潰瘍性大腸炎と診断され,保存的治療で症状軽快,1984年11月直腸びらん部の生検よりアメーバ原虫が検出された.メトロニダゾール投与で症状は完全に消失,内視鏡的にも治癒が確認された.以後1985年8月及び1986年4月の大腸内視鏡検査で異常なかったが,1990年7月再び粘血便出現,大腸内視鏡検査で直腸,S状結腸,横行結腸にびらん,小潰瘍を認め,生検でアメーバ原虫を検出,前回と同様メトロニダゾール投与で治癒した.内視鏡で治癒確認後のアメーバ赤痢の再発は極めてまれであるが再発機序としてアメーバ原虫の(1)腸管内潜伏(2)再感染が考えられた.