著者
林田 志峯 獨協医科大学産科婦人科学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.T49-T56, 2010-03-25
被引用文献数
1

わが国におけるB 型肝炎ウイルス(HBV)母子感染予防法として厚生省方式(HB ワクチン生後二ヶ月開始,HBIG2回投与)が広く実施されてきた.同時期に開発された千葉大方式(HB ワクチン生後24時間内開始,HBIG1回投与)の多施設共同臨床治験により,同方式と厚生省方式間で児の能動免疫獲得率・キャリア化率,有害事象発生率に関して有意差が無く,省力化・安全性・経済性の観点から千葉大方式の優位性が報告されている.今回,HBV 母子感染予防対策を児のHBV キャリア化阻止と対策漏れにエンドポイントを絞り,千葉大方式を更に簡略化し,全ての処置を生後1 ヶ月健診時に完了する獨協医大方式(HB ワクチン生後24時間以内開始,HBIG1回投与)の臨床治験を日本および中国大連市において実施した.両方式群間で,児の能動免疫獲得率,生後6 ヶ月時獲得HBs 抗体価,キャリア化率,有害事象発生率の全てにおいて有意差を認めず,一方,省力化・経済性と対策漏れに関しては獨協医大方式の優位性が判明した.獨協医大方式はその経済性,簡便性より,わが国はもとよりHBV 侵淫地域であるアフリカ,東南アジア諸国等においても積極的採用が期待され得る選択肢である.