著者
上地 秀昭 Hideaki Uechi 豊見城中央病院産婦人科 : 獨協医科大学産科婦人科学 Devision of Obstetrics and Gynecology Tomishiro central Hospital : Department of Obstetrics and Gynecology Dokkyo Medical University
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.25-31, 2011-03-25

近年若年女性の子宮頸部異形成や上皮内癌などの初期病変が増加傾向にあり,その治療として子宮頸部円錐切除術(円切)が施行されている.円切により子宮頸部浸潤癌の発生を減少させるが,再発した場合浸潤癌へ進展する危険性は高い.そのため治療後の再発を早期に発見することが求められる.今回,当院で円切を施行した226 例において,円切前後におけるhuman papillomavirus(HPV)感染と外科断端陰性例での再発との関連性を検討した.術前のHPV 陽性率は97.3%(220/226 例)であり,HPV16 型が最も多く44.5%を占めた.HPV 陽性220 例中54 例(25.4%)に術後HPV 陽性が持続し,HPV 陰性例に比して再発率が有意に高かった(p<0.01).また,外科断端陰性の181 例においても,円切後HPV が持続した例での再発率が有意に高かった(p<0.01).さらに円切後HPV 陽性の外科断端陰性例において,円切前後で同じ型のHPV が持続した例では有意に再発率が高かった(p<0.01).以上より,円切後HPV 陽性及びHPV の型(同一)は再発のリスク因子であり,円切後のフォローアップに細胞診のみでなくHPV 検査及び型検索を併用して行うことが重要である.
著者
林田 志峯 獨協医科大学産科婦人科学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.T49-T56, 2010-03-25
被引用文献数
1

わが国におけるB 型肝炎ウイルス(HBV)母子感染予防法として厚生省方式(HB ワクチン生後二ヶ月開始,HBIG2回投与)が広く実施されてきた.同時期に開発された千葉大方式(HB ワクチン生後24時間内開始,HBIG1回投与)の多施設共同臨床治験により,同方式と厚生省方式間で児の能動免疫獲得率・キャリア化率,有害事象発生率に関して有意差が無く,省力化・安全性・経済性の観点から千葉大方式の優位性が報告されている.今回,HBV 母子感染予防対策を児のHBV キャリア化阻止と対策漏れにエンドポイントを絞り,千葉大方式を更に簡略化し,全ての処置を生後1 ヶ月健診時に完了する獨協医大方式(HB ワクチン生後24時間以内開始,HBIG1回投与)の臨床治験を日本および中国大連市において実施した.両方式群間で,児の能動免疫獲得率,生後6 ヶ月時獲得HBs 抗体価,キャリア化率,有害事象発生率の全てにおいて有意差を認めず,一方,省力化・経済性と対策漏れに関しては獨協医大方式の優位性が判明した.獨協医大方式はその経済性,簡便性より,わが国はもとよりHBV 侵淫地域であるアフリカ,東南アジア諸国等においても積極的採用が期待され得る選択肢である.