- 著者
-
新地 修
林田 正尚
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会総合大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.1996, no.2, pp.375-377, 1996-03-11
- 被引用文献数
-
1
テキサスインスツルメンツ(TI)におけるDMDの研究開発は、ほぼ20年前ラリー・ホーンベックがデバイスを発明した時に始まった。TIではそれ以来ずっと継続的にホーンベックとその開発チームにより、DMDチップとDigital Light Processing(DLP)^<TM>技術を応用した幅広いアプリケーションの研究開発を続けて来た。最初のデバイスはデフォーマブル・メンブレーン・ディスプレイと呼ばれ、シリコン基板上に作られたメモリーマトリクスと、ミラーとして働く硬化ポリマー薄膜のハイブリッド構造であった。このポリマー薄膜は個別につくられた後、メモリーマトリクスを完成したSiチップ上に合体されていた。その構造概略をFig1に示す。全てTIのDMDは、静電界作用により動作させるタイプのマイクロミラーデバイスである。複雑なハイブリット構造をやめて、モノリジック化する為にウェハー上に直接A1スパッターを行い、マイクロミラーを作り込む新しいプロセスが開発された。その構造をFig2に示す。この"クローバーの葉"状のDMDは、各ピクセル毎にその直下に配置されたメモリー素子による静電界作用によって動作を行う。全て通常のIC製造ラインを使って作られたDMDチップはさまざまなディスプレイ、プリンター、光信号制御システムなどに応用される。当初、多くのアプリケーションでは、DMDで反射された光の角度や明るさのアナログ変調を行う為にミラーの位置もアナログ制御が要求されたが、今ではほとんどの場合ラーはバイナリ位置制御で実現出来るので、新しいミラーの構造と動作モードは低電圧ディジタルCMOS回路で開発されるようになった。このバイステーブル・ミラーのアレーの一部分を拡大した写真をFig3に示す。(768×576ピクセルDMDチップ)これらのミラーは、二端をそれぞれ支柱に支えられそれらの対角線を中心に安定した二つの状態で回転する。支持されていない側のコーナーのどちらかはSi基板上にA1膜で形成されたランディングパッドに接触する。現在のDMD(Digital Micromirror Device)という名前は、このタイプのバイステーブルな動作をするところから名付けられている。TIは最近VGA、SVGAやHDTVなどに使用する1280×1024ピクセルDMDや、2048×1152ピクセルの高解像度を持つデバイスも開発試作を完了した。これらのDMDを使ったデバイスプレイは業界初の全ディジタル式ディスプレイ・システムとなる。TIのNTSC方式の最初のDMD全ディジタル・ビデオシステムは768×576ピクセルのデバイスを使用し、1993年2月にDARPAのHDシステム・プログラムレビューで発表された。