著者
柄澤 清美
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.115-132, 2003-03-10

浴風園は、1927年に恩賜財団浴風会によって設立された養老施設である。浴風園は、恩賜財団の豊富な資産をもとに内務省直轄の運営が行われ、当時としては質の高い養老施設とされていた。しかし、これまでの浴風園の評価は、社会福祉的視点からのものが多く、医療についての評価が不十分であった。今回の論文は、浴風園における、高齢者医療保障前史ともいえる医療を看護学的および経済学的に分析したものである。まず、浴風園がどのような社会的必然性によって設立されたかをふまえ、それによりどのような医療システムを作ったかを論じた。それから、医療の展開過程を分析した。すなわち、老人の医療ニーズおよび看護ニーズがどのように明らかにされ、それにどう対応したかについて論じた。また、尼子富士郎の老年医学研究の業績について論じた。そして、それらをふまえて、浴風園における医療活動を高齢者医療保障前史として位置づけた。