著者
染谷 雄一 清水 博之
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.31-40, 2018 (Released:2019-05-18)
参考文献数
36

経口弱毒生ポリオワクチンに用いられるセービン株ポリオウイルスから製造された不活化ポリオワクチンは,世界に先駆け,わが国で初めて定期接種ワクチンとして実用化された.セービン株は弱毒化されたウイルスであることから,野生株から不活化ワクチンを製造するよりも比較的安全であるという考えのもとにセービン株由来不活化ワクチンの開発が進められてきた.また,品質管理試験のひとつ(ラット免疫原性試験)においてもセービン株を用いてワクチンの有効性を評価する方が安全性が高い.しかしながら,世界ポリオ根絶が目前に迫ってきた現在においては,野生株,ワクチン株に関わらず,ポリオワクチン製造や品質管理試験を行う施設では,ポリオ根絶最終段階戦略計画2013-2018に基づいて,WHOにより求められているバイオリスク管理規準に準拠したポリオウイルスの取扱いが必要とされる.現時点では,ワクチン株を含むすべての2型ポリオウイルスが封じ込め対象である.2型ポリオウイルス感染性材料を取扱い,保有する施設では,作業従事者ばかりでなく,環境・地域社会へのウイルス伝播のリスク評価に基づいたリスク管理対策の整備が必要とされる.その後,2型ポリオウイルス取扱い施設は,WHOにより示された施設認証計画に従い,施設認証を受ける必要がある.