372 366 0 0 OA 麻疹ワクチン

著者
中山 哲夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.257-266, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
44

麻疹ワクチンは1954年に分離されたEdmonston株を親株としてニワトリ胎児胚細胞をはじめとした本来の感受性宿主以外の細胞で継代することにより高度弱毒生ワクチンが樹立された.麻疹ワクチンの普及により麻疹患者報告例数は減少し南北アメリカは麻疹排除に成功し,我が国を含めた太平洋西部地域は2012年を麻疹排除の目標達成年度としている.近年の分子生物学的手法の進歩により麻疹ウイルスRNAをcDNAクローン化し感染性ウイルスを回収するreverse geneticsが確立され,弱毒の分子基盤が解明され麻疹ウイルスの性状が解析されてきた.また,こうした分子生物学的な手技を応用し既存の方法では有効なワクチンが開発されていない感染症に対して既に安全性と有効性が確立されている弱毒麻疹ワクチンを生ワクチンウイルスベクターのプラットフォームとする新規の組換え生ワクチンへの応用,ワクチン株をベースとするoncolytic measles virusへの展開を述べる.
著者
松山 州徳
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.109-116, 2011-06-25 (Released:2012-03-20)
参考文献数
31
被引用文献数
4

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)のエンベロープ糖蛋白(S蛋白)は,宿主プロテアーゼ(トリプシン,エラスターゼ,カテプシン,TMPRSS2)に切られて活性化される.インフルエンザウイルス等多くのエンベロープウイルスもプロテアーゼを利用するが,プロテアーゼの作用する様式がSARS-CoVとは異なる.インフルエンザウイルスの場合は細胞でウイルスが作られるときエンベロープ糖蛋白(HA)がプロテアーゼに切られ「膜融合誘導可能な形」になるが,SARS-CoVの場合は「細胞侵入の瞬間」にS蛋白が切られて膜融合開始の引き金が引かれる.我々はSARS-CoVによく似たS蛋白を持つマウス肝炎ウイルス(MHV-2)を用いて,S蛋白は二段階の構造変化をすることを検出した.まずS蛋白はレセプターに結合すると安定した三量体を形成し,Fusion Peptideを露出させ,細胞膜に突き刺さる.続いてプロテアーゼにより開裂を受け,内部のヘリックス構造を引きつけることによりウイルスと細胞の膜を引き寄せ,融合させると考えられる.このメカニズムはウイルスにとって標的細胞で確実に膜融合を誘導できる効率の良い仕組みである.
著者
白土(堀越) 東子 武田 直和
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.181-189, 2007 (Released:2008-06-05)
参考文献数
27
被引用文献数
4 2

ノロウイルス(NoV)は世界各地で発生しているウイルス性下痢症の主たる原因ウイルスである.少なくとも33遺伝子型を有し,極めて多様性を持った集団として存在する.近年,NoVのプロトタイプであるNorwalk/68(NV/68)株が血液型抗原であるH(O),A,Leb型抗原に吸着することが明らかになった.血液型抗原とは抗原構造をもった糖鎖の総称であり,ヒトの赤血球表面だけでなく,NoVが標的とするであろう腸管上皮細胞にも発現されている.血液型抗原の合成に関与するフコース転位酵素の一つであるFUT2(Se)酵素をコードするFUT2遺伝子が活性型のヒトでは血液型抗原が腸管上皮細胞に発現されている(分泌型個体).これに対しSe遺伝子が変異により不活化すると,血液型抗原は上皮細胞に発現されなくなる(非分泌型個体).NV/68株をボランティアに感染させると分泌型個体で感染が成立し非分泌型個体では成立しない.さらに血液型間で感染率を比較検討すると,O型のヒトでの感染率が高くB型では感染率が低いことが報告されている.しかし,その一方でNoVに属するすべてのウイルス株がNV/68と同じ血液型抗原を認識するわけではないことが明らかになってきた.GII/4遺伝子型は他の遺伝子型に比べ結合できる血液型抗原の種類が多く,またそれぞれの血液型抗原への結合力も強いことがin vitro binding assay,疫学研究の両面から証明されている.この遺伝子型は,日本も含め世界中で流行している株であるが,その伝播力についても答えが出ていない.直接的な証明はまだなされていないものの,GII/4遺伝子型株の血液型抗原への結合力の強さが伝播力の強さに結びついている可能性が大きい.血液型抗原への吸着をスタートとしたNoVの感染が,その後,どの様なメカニズムによって下痢症発症にまで結びつくのか,解明が待たれる.
著者
川名 敬
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.35-42, 2014-06-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
21

ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち発癌性HPVでは,持続感染によって子宮頸癌をはじめとする癌を発症することがある.HPVを標的とした子宮頸癌治療には,E6, E7が標的分子として期待される.HPVを標的した分子標的治療として我々は2つ考えた.・ウイルス癌遺伝子の発現をsiRNAで抑える核酸医学と,・ウイルス癌蛋白質を癌抗原とした癌免疫療法,である.・ウイルス癌遺伝子の発現を抑える核酸医学は多く検討されてきたが,そのdrug-delivery system(DDS)が問題であった.我々は高分子ナノミセルを用いたDDSをE6/E7 siRNAに組み合わせた創薬基礎研究を行った.・HPV分子に対する細胞性免疫を誘導することによって免疫学的排除を目指した癌免疫療法(HPV治療ワクチンとも言う)は子宮頸癌やその前癌病変に対する臨床試験も多く実施されてきた.しかし,いずれも実用化されていない.我々はHPV16型E7に対する粘膜免疫を誘導する癌免疫療法としてE7発現乳酸菌を製剤化し,経口投与することを考えた.子宮頸癌前癌病変(CIN3)患者を対象とした臨床試験では,腸管粘膜で誘導された抗E7-IFN-gamma産生細胞が子宮頸部粘膜にホーミングし,CIN3を退縮させることを見いだした.HPV発癌を逆手に取ったHPV分子標的治療について,新しい戦略を用いた創薬とその臨床応用の可能性が示唆された.

20 0 0 0 OA フィロウイルス

著者
高田 礼人
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.197-208, 2012-12-25 (Released:2013-10-22)
参考文献数
93
被引用文献数
1

フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)はヒトを含む霊長類に重篤な出血熱をひきおこす病原体として知られている.ワクチンおよび抗ウイルス薬は実用化されていない.近年,ウイルス増殖過程におけるフィロウイルス蛋白質の様々な機能およびウイルス蛋白質と宿主因子との相互作用が明らかになってきた.また,霊長類以外の動物のフィロウイルス感染およびヨーロッパにおける新種のフィロウイルス発見などの報告により,フィロウイルスの宿主域・生態に関する研究も新たな展開をみせている.本稿では,フィロウイルスに関する基礎的な知見と最近の話題を紹介する.

16 0 0 0 OA 麻疹ウイルス

著者
田原 舞乃 竹田 誠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3-16, 2017-06-25 (Released:2018-03-29)
参考文献数
104

麻疹ウイルスは非常に感染力と病原性が強く,小児死亡の主要な原因ウイルスであるが,有効なワクチンが存在する.多くの国でワクチン接種を徹底することによって排除が進んでいる.麻疹ウイルスHタンパク質がレセプターと結合することが感染現象の始まりである.麻疹ウイルスは免疫細胞に発現しているSignaling lymphocyte activation molecule (SLAM)と,上皮細胞の基底膜側に発現しているnectin-4の2種類の分子をレセプターとして用いる.麻疹の病態は,麻疹ウイルスがSLAMとnectin-4の両方のレセプターを使うことと強く関係している.Hタンパク質のレセプターへの結合が引き金となって,Fタンパク質による膜融合が起きる.このFタンパク質のトリガーにはHタンパク質のストーク部分が重要である.また,Hタンパク質のエピトープの詳細な解析の結果,レセプター結合部位など,構造的・機能的にアミノ酸変化を許容できない複数の領域がエピトープになっていることが分かった.このことが抗原性の変化が起こらないことのひとつの原因と考えられる.実際に,約60年前の株から作られたワクチンが,現在の流行株に対しても有効性が低下していないことが示されている.
著者
田口 文広
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.165-171, 2006 (Released:2007-04-20)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

コロナウイルスにはヒト,家畜,実験動物など様々な動物に感染するウイルスが知られている.その中で,マウス肝炎ウイルス(MHV)はマウスに急性致死性肝炎,脱随性脳脊髄炎などを引き起こし,ヒトの疾患モデルとして研究が進んでいる.一方,SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体であり,2003年に発見された新しいウイルスだが,医学的インパクトの強さから発見以来精力的に研究が進められ,現在最も解析が進んでいるコロナウイルスの一つである.両ウイルスの受容体は同定され,ウイルスの受容体結合や細胞侵入機構について研究が進められている.最近の研究から,これらのウイルスは異なる経路で細胞内に侵入することが分かってきた.本稿では,両ウイルスの細胞侵入機構について概説し,細胞侵入機構のウイルスの病原性発現への関与について紹介する.
著者
井上 正樹
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.155-164, 2008-12-24 (Released:2009-08-13)
参考文献数
32
被引用文献数
3 4

20世紀後半からの腫瘍ウイルス学研究はHPVが子宮頚癌の原因ウイルスであることを明白にした.HPVは性行為にて感染することが疫学的にも明らかとなり,HPV感染を予防することで子宮頸癌を撲滅する戦略が見えてきた.その基軸をなすものはHPVワクチンの開発である.現在実用化されているワクチンはHPVの外郭蛋白をつくるL1遺伝子を酵母菌や昆虫細胞で発現させる遺伝子組換え型ワクチンである.HPV-DNA 16/18型に対する2価ワクチンとHPV16 /18型に尖圭コンジローマの原因ウイルスである6/11型を加えた4価ワクチンの2種類が実用化されている.ワクチンには重篤な副作用は無く「前癌病変」や「コンジローマ」をほぼ100%防御する.既に世界の多くの国で承認され,若年女性を中心に接種が開始されている.
著者
宮沢 孝幸 下出 紗弓 中川 草
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.21-30, 2016-06-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
56

ネコ(Felis catus)の内在性レトロウイルスであるRD-114ウイルスは,1971年にヒト横紋筋肉腫細胞から発見されたガンマレトロウイルスである.RD-114ウイルスは,およそ数百万年前に地中海沿岸でヒヒ属の祖先動物の内在性レトロウイルスが,ネコ属の祖先動物に感染し内在化,その後,数百万年もの間,感染性の内在性レトロウイルスとして維持されてきたと考えられてきた.RD-114関連ウイルスのネコゲノムの座位を精査した結果,感染性のRD-114ウイルスをネコはもっておらず,感染性をもたない内在性レトロウイルス(RDRSと命名)の組換えによって感染性が復活したRD-114ウイルスが生じることがわかった.さらに,感染性が復活しうるタイプのRDRS(新しいRDRSと命名)は,ネコが家畜化されたおよそ1万年前以降にネコのゲノムに侵入したと考えられた.新しいRDRSの保有率は,欧米とアジアのネコの間で大きく異なり,染色体上の位置もネコの品種によって異なった.本研究によって,これまで不明であった家畜化後のイエネコの移動経路を明らかにするための指標として,RDRSが有用であることがわかった.
著者
神田 忠仁 柊元 巌
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.219-230, 2006 (Released:2007-04-20)
参考文献数
66
被引用文献数
7 5

HPVは8000塩基対の環状2本鎖DNAをゲノムとする小型のウイルスで,エンヴェロープは無い.表皮基底細胞に侵入し,核内エピゾームとして潜伏持続感染する.感染細胞が表皮形成の分化を始めると,HPVゲノムの複製に利用するため,E6蛋白質がp53を分解し,E7蛋白質がpRbの機能を阻害して細胞のDNA合成系を再活性化する.通常ウイルス増殖後に感染細胞は死滅する.ごく稀に細胞DNAにE6,E7遺伝子が組み込まれ,ウイルス増殖ができないにもかかわらずE6及びE7蛋白質が継続的に高発現することがある.このような細胞は不死化し,さらに変異が蓄積して癌化する.100以上の遺伝子型のうち,このような機構で子宮頚癌に関わるものは16型や18型等の13の型(高リスク型)である.主要キャプシド蛋白質のみを細胞で高発現させると,自律的に集合してウイルス様粒子ができる.6,11,16,18型のウイルス様粒子を抗原とするワクチンの臨床試験が行われ,これまでの成績は型特異的な感染予防効果を示している.
著者
水谷 哲也
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-6, 2013-06-25 (Released:2014-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

2012年にサウジアラビア・カタールで発生した重症呼吸器症患者の原因病原体は,新型のコロナウイルスであった.このウイルスはMiddle East Respiratory Syndrome Coronavirus (MERS-CoV) と呼ばれ,2002年に発生した重症呼吸器症候群(SARS)以来のコロナウイルスによる重症例として注目されている.発生後1年しか経過していないので不明な点は多いものの,MERS-CoVはベータコロナウイルスの2Cグループに属するタケコウモリコロナのウイルス(Bat-CoV HKU4)やアブラコウモリのウイルス(Bat-CoV HKU5)と近縁であることが明らかとなった.このようにコウモリが自然宿主であることが推測されているが,まだ特定に至っていない.最近,ヒトからヒトへの感染が強く疑われるケースが報告され,感染の拡大が懸念されている.
著者
早川 洋一
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.67-72, 1998-06-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
27

10 0 0 0 OA HPVワクチン

著者
川名 敬
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.79-86, 2012-06-25 (Released:2013-05-09)
参考文献数
26

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌や尖圭コンジローマの原因となりうるウイルスである.この10年の間にHPV感染を予防できるHPVワクチンが開発され,大規模臨床試験によって多くのHPV関連疾患に対する予防効果が全世界的に証明された.HPV関連疾患で最も重要なものは子宮頸癌である.子宮頸癌の罹患率のピークは20年間で20才近く若年化し現在は2545才がピークである.がんを予防できるワクチンという観点から極めて重要な意義を持つ.ただし子宮頸癌予防に関してはその限界も理解しておく必要がある.一方,尖圭コンジローマの予防については,海外では既にpopulation impactが現れてきている.尖圭コンジローマが近い将来社会から撲滅されることも夢ではない.本稿ではHPVワクチンをレビューしたい.
著者
加藤 孝宣 脇田 隆字
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.287-295, 2005 (Released:2006-03-23)
参考文献数
43
被引用文献数
5 6

C型肝炎ウイルス(HCV)は,1989年カイロン社の研究グループにより発見された.日本では200万人,世界中で17000万人にのぼる感染者が存在し,インターフェロンを中心とした治療が行われているがその効果は未だ不十分である.これまでHCVには良いウイルス培養系と実験用の感染小動物が存在しないことがHCVの基礎研究の妨げになってきた.我々はHCVによる劇症肝炎患者からHCV株を分離し,その株が他の慢性肝炎患者由来の株に比べ,効率的に増殖できることを明らかにしてきた.さらにこの株を用いることにより培養細胞中での感染性HCV粒子生成に成功した.この感染性HCV粒子は培養細胞だけでなくチンパンジーにも感染可能であった.この系を用いることにより,HCVの感染から分泌まですべてのステップが培養細胞内で観察可能であり,ウイルスの複製機構の解明や抗ウイルス薬の開発に有用であると考えられる.
著者
福見 秀雄
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.107-122, 1985-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
73
被引用文献数
1 1
著者
田口 文広
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.201-209, 2003-12-31 (Released:2010-03-12)
参考文献数
46
被引用文献数
5 4