著者
柘植 盛男 宮林 達也 田中 誠之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.1896-1898, 1971-09-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

フェノール樹脂およびフェノール化合物-テトラヒドロフラン系について, ゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) の分離機構に関連する実験をおこなった。この系においては分子サイズによる分離効果よりも分子内水素結合による分離効果がより大きく働いていると考えられる結果が得られた。すなわち分子内水素結合を形成する分子サイズが大きいハイオルトフェノールノボラック多量体の溶出容量は同じ分子最で分子内水素結合を形成しない且つ分子サイズの小さいランダムノボラック樹脂の溶出容量より大きいことが認められた。この原因としては分子内水素結合により拘束されたフェノール性水酸基とテトラヒドロフランとの相互作用が, ラソダムフェノールノボラック樹脂のそれよりも小さくなり極限粘度 [η] が低下し, その結果 Benoit のパラメーター [η]・M (Mは分子量) が小さくなり溶出容量が大きくなったものと考えられる。同様にレゾール樹脂中のメチロールフェノール異性体についても, メチロール基とフェノール性水酸基との間に分子内水素結合を形成する異性体の溶出容量は分子内水素結合を形成しない異性体のそれよりも, より大きいことが認められた。またこの現象は一般のフェノール化合物についても, またメチルエチルケトンを溶媒として用いた場合にも認められた。