著者
大釜 恵 柳 栄治 橘 深恵 渡部 節子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.414-419, 2020-01-31 (Released:2020-10-06)
参考文献数
7

新型インフルエンザなどが発生した場合には,病原体曝露予防のためにつなぎ式感染防護服(以下,防護服)の着用が必要となる。横須賀市立市民病院では,防護服は2時間着用を目安にしているが,30分間の訓練時においても使用者からは防護服着用による暑さや口喝などの不快感の訴えが多く聞かれる。このため,実際に感染症患者が搬送されて2時間使用した場合には注意力低下や業務上のエラーを起こす可能性がある。本研究では,防護服使用者の不快感を最小限にする目的で,防護服2時間着用時の防護服内温度と着用感を明らかにするとともに,対応策を検討した。訓練時に各病棟から選出された感染担当看護師10名を5名ずつ2群に分け,対照群にはインナーの上に防護服を着用させ,介入群にはインナーの上に保冷剤を装着したベスト(以下クールベスト)を着用させ,その上に防護服を着用させた。着用10,20,30,40,50,60,120分後に着用感を確認するとともに,対照群・介入群から無作為に選出した各2名について防護服内の温度を測定した。着用2時間後の防護服内の温度は,着用直後に比較して,対照群は平均でプラス2.5℃,介入群はプラス1.4℃であった。防護服の着用感に関して,対照群は30分後に全員が「暑くてつらい」,120分後に「暑くて業務に集中できない」「息苦しい」などの回答をした。一方,介入群は,40分後まで意見はなく,50分後に3名が「暑くてつらい」と回答した。以上のことから,クールベストの着用は防護服内の温度上昇を防ぐこととなり,防護服着用による暑さなどの不快感の軽減に繋がることが示唆された。